続・深夜食堂
劇場版の第2作。「焼肉定食」「焼きうどん」「豚汁定食」の3話が描かれる。市井の小さなドラマを描くのはテレビ版と同じだ。テレビ版は30分足らずなので大きなドラマは物理的に描けない。ほとんどが歌舞伎町の深夜食堂「めしや」とその周辺で話が進行し、外部のエピソードはナレーションで済まされることが多い。映画版がテレビ版と違うのはキャストが豪華なところと外部のエピソードも描かれることだ。といっても印象はテレビ版と変わらない。シリーズのファンはテレビと違うものを期待しているわけではないだろうから、この方が好ましいだろう。
3話の中で最も力が入っているのは「豚汁定食」。福岡から出てきた老婦人・小川夕起子(渡辺美佐子)が「めしや」の常連の木内晴美(片岡礼子)のタクシーに乗ったことから話が始まる。夕起子は息子から「金を持ってきてくれ」と電話がかかってきて上京し、息子が勤める会社の同僚に200万円を渡した。「来て来て詐欺」ではないかと感じた晴美は夕起子と一緒に交番に行った後、「めしや」にやってくる。
夕起子は豚汁定食をおいしそうに食べるが、息子の電話番号も住所も知らなかった。夕起子と息子の関係や、それに絡む豚汁のエピソードが描かれていく。映画版第1作に登場したみちる(多部未華子)も出てきて、夕起子を自分のアパートに泊める。みちるは(前作で)「めしや」のマスター(小林薫)に親切にされたので、「困っている人がいたら、私も親切にしたいと思っていた」と語る。多部未華子、今回も良い。
「焼肉定食」はストレスがたまると、喪服を着て街を歩く赤塚範子(河井青葉)がメイン。範子は編集者で、最近、新人作家の担当を外されてむしゃくしゃしていた。そんな時、作家の葬儀で石田(佐藤浩市)と出会う。石田は雑誌編集の仕事をしていた。2人は急速に親しくなるが…。「焼きうどん」は夫を亡くして蕎麦屋を女手一つで切り盛りしてきた高木聖子(キムラ緑子)の話。店を手伝う息子の清太(池松壮亮)と15歳年上の木村さおり(小島聖)の関係にやきもきする聖子の姿を描く。キムラ緑子がとてもうまい。
今回も水準を保った出来だが、3話を緩やかにつなぐ前作の骨壺のようなエピソードがないのが惜しい。1本の映画として見るならば、3話に何かつながりがほしいところなのだ。
不破万作や松重豊、光石研、中山祐一朗、そしてお茶漬けシスターズの小林麻子、吉本菜穂子、須藤理彩など「めしや」常連の面々が出てくると、なんだかほっとする。「めしや」は「男はつらいよ」の「とらや」と同じような雰囲気になってきた。テレビドラマを毎年10本作るのは大変だろうから、「男はつらいよ」のように年1本ずつ映画を作り続けてはどうだろう。次は「続々」か「新」のタイトルで。