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シネマ1987online

13階段

「13階段」パンフレット

高野和明の江戸川乱歩賞受賞作を「ココニイルコト」「ボーン・アイデンティティー」も底が浅い話だなと思ったが、あれでも水深50センチぐらいはあった。この映画の水深は5センチほどである。

傷害致死で服役して仮出所したばかりの三上純一(反町隆史)のところへ、松山刑務所の刑務官・南郷正二(山崎努)が訪ねてくる。死刑囚・樹原(宮藤官九郎)の冤罪を晴らすため13年前に起きた殺人事件の再捜査への協力依頼だった。依頼人は明らかにされていないが、報酬は1000万円。慰謝料に7000万円を支払い、実家が金策に困っていたこともあって純一は南郷に協力することになる。樹原は自分の保護司夫妻を殺したとされたが、オートバイの事故で事件前後の記憶がない。凶器も見つかっていない。新たな証拠を見つけ出す手がかりは最近、樹原が思い出した「階段を上っていた」という記憶だけだった。事件があったのは純一が殺してしまった佐村恭介が住んでいた町。佐村家を訪れた純一は父親の光男(井川比佐志)から「死んで罪を償え」とののしられる。一方、南郷にもかつて死刑囚を殺してしまったという罪の意識があった。2人は贖罪の意識にとらわれながら、死刑囚を助けるため犯行現場付近で階段を探し求める。

終盤に唖然とするのはあまりにも狭い人間関係の中で事件が起きていること。犯人の作為と偶然が重なったとはいえ、これではもうあんまりである。「誘拐」も犯人の意外性と社会性で見せたから、森下直はミステリーに理解はあると思うが、事件の詳細で明らかにされない部分も多く、この脚本はまずい。もっとポイントを絞って、死刑の是非を前面に出すような展開も加われば、映画の格はもう少し上がっていたのではないかと思う。取り上げていることが通り一遍なのである。

長澤監督は感動するドラマを目指したそうだ。しかし、底が浅いドラマでは感動しようがない。死刑執行までのタイムリミットがサスペンスとして効いてこないのも弱い。たぶん、長澤監督はミステリーやサスペンス映画には向かないのだろう。出演者は好演しており、山崎努の自然な演技は相変わらずうまい。反町隆史も眼鏡を掛けた内向的な役柄をそつなく演じている。刑務所の所長役を「刑務所の中」を監督した崔洋一が演じているのは狙ったことではないのだろうが、崔洋一は「御法度」に続いてまたまたうまい。この人は口跡が良く、外見の貫禄もこうした役柄にピッタリである。

【データ】2003年 2時間2分 配給:東宝
監督:長澤雅彦 製作:宮内正喜 プロデューサー:角谷優 企画協力:岡田裕 共同プロデューサー:増田久雄 原作:高野和明 脚本:森下直 撮影:藤澤順一 美術:小川富美夫 音楽:ニック・ウッド
出演:反町隆史 山崎努 笑福亭鶴瓶 井川比佐志 大杉漣 別所哲也 寺島進 田中麗奈 木内晶子 宮迫博之 深水三章 西田尚美 左時枝 崔洋一 宮藤官九郎 石橋蓮司 大滝秀治 螢雪次朗 河原さぶ 水橋研二

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