さくや 妖怪伝
何かの原作の映画化かと思ったら、原口智生監督のオリジナル。むろん、「ゲゲゲの鬼太郎」など過去の妖怪ものが基本にあるにせよ、時代背景や主人公の性格、妖刀村正の設定などツボを押さえた話である。映画の作りも大作風にせず、最初から小品佳作を目指した(と思える)姿勢に好感がもてる。ヒロインの公儀妖怪討伐士・榊咲夜(さかき・さくや)役の安藤希は立ち回りやアクションを見事にこなして清楚な美貌を輝かせ、この映画一番の魅力であることは衆目の一致するところだろう。安藤希の好演がこの映画を支えたと言っていい。いかにも作り物めいた妖怪の造型にちょっと不満は残るし、不要と思われる場面もいくつかあるが、それを超えて納得のできる作りであり、この夏のファミリー映画では最も楽しめた。
何かの原作の映画化かと思ったら、原口智生監督のオリジナル。むろん、「ゲゲゲの鬼太郎」など過去の妖怪ものが基本にあるにせよ、時代背景や主人公の性格、妖刀村正の設定などツボを押さえた話である。映画の作りも大作風にせず、最初から小品佳作を目指した(と思える)姿勢に好感がもてる。ヒロインの公儀妖怪討伐士・榊咲夜(さかき・さくや)役の安藤希は立ち回りやアクションを見事にこなして清楚な美貌を輝かせ、この映画一番の魅力であることは衆目の一致するところだろう。安藤希の好演がこの映画を支えたと言っていい。いかにも作り物めいた妖怪の造型にちょっと不満は残るし、不要と思われる場面もいくつかあるが、それを超えて納得のできる作りであり、この夏のファミリー映画では最も楽しめた。
「神々の力及ばざる時、妖魔をもって妖魔を断つ」−。宝永4年(1707年)、富士山の噴火で結界が破れ、多数の妖怪が地上に現れる。公儀妖怪討伐士・榊備前守芳明(藤岡弘)は代々受け継ぐ妖刀村正で妖怪を征伐してきたが、村正には持ち主の命を縮める欠点があり、芳明の寿命も残り少なかった。芳明は大河童との対決で命を落とし、娘の咲夜(安藤希)が父の跡を継いで、大河童を退治。そばにいた河童の赤ん坊を自分の弟として育てることを決意する。と、ここまでがタイトル前の長い導入部分。半年後、赤ん坊太郎(山内秀一)は人間で言えば10歳の子どもに成長。そんな時、幕府大老(丹波哲朗)から妖怪の元凶を断つよう密命が下る。咲夜は猿鬼兵衛(ましらぎ・ひょうえ=逆木圭一郎) 、似鳥周造(にがらす・しゅうぞう=嶋田久作)という2人の忍者を率い、太郎も同行して妖怪のボス土蜘蛛の女王(ひめみこ)がいる駿河の地に旅立つ。
八王子の化け猫退治が最初の見せ場。化け猫の造型が着ぐるみ然としていて興を削ぐが、アクションは合格だろう。荒れ果てた屋敷には生きた人間を人形に変える傀儡師(くぐつし)もおり、塚本晋也監督(「鉄男」「双生児」)が怪演を見せる。次の善玉妖怪総出演の場面はムムムという出来なのだが、恐らく過去の妖怪ものに経緯を表したのだと思う。駿河に舞台を移してからは快調だ。巨大化した土蜘蛛との対決を描くクライマックスのSFXはそれまでとは打って変わって見応えがある。SFX担当は「ガメラ」シリーズの樋口真嗣。土蜘蛛を演じる松坂慶子も真剣に演じており、感心させられる。
子どもを意識してか、ストーリーはシンプル。しかし、持ち主の残り寿命を示す魂計灯や妖怪の動向を表示する照魔鏡・八重雲鏡などのガジェットと細部の設定の細かさが映画を楽しいものにしている。原口監督、本気でこういう世界が好きなのだろう。SFXでは「ジュブナイル」に負けているけれど、映画としてのまとまりはこちらが上だ。同じ特殊効果出身監督として「ジュブナイル」の山崎貴と同様、原口監督の次作にも期待したい。
【データ】2000年 1時間28分 TOWANI提供 配給:ワーナー・ブラザース
監督・原案:原口智生 特技監督:樋口真嗣 製作:福島真平 鈴木修美 プロデューサー:大戸正彦 大塚博史 桜井勉 企画:岸川靖 脚本:光益公映 コンセプトデザイン:冬目景 撮影:江原祥二 美術 原田哲男 特撮技術統括:尾上克郎 音楽:川井憲次
出演:安藤希 山内秀一 嶋田久作 逆木圭一郎 藤岡弘 松坂慶子 丹波哲郎 黒田勇樹 絵沢萠子 塚本晋也