It's Only a Movie, But …

シネマ1987online

ヤッターマン

元のアニメがギャグなので、映画もギャグ。それもあまり笑えないギャグだ。アニメの実写映画化は時々あるが、この映画ほどアニメを忠実に再現しようとした映画はないだろう。何しろ映画の最後に次週の予告編まであって、それにはヤッターペリカンと白いコスチュームのドロンジョが出てくるという気合いの入れようだ。しかし、映画に1時間51分の長さが必要かと言えば、まったく必要ではない。30分のアニメを2時間近くにするにはそれなりにストーリーに工夫を凝らさなければいけない。この映画はそこが足りなかった。同じパターンの話を2回見せられるような構成は決して褒められたものではないだろう。アニメの外観の再現にばかり傾注してアイデアが足りない。ギャグと思って見に行ったので腹は立たなかったし、そこそこ楽しんだのだけれど、実写でも30分で十分だったのではないか。というか、30分のストーリーを3本にした構成だったら褒めていたかもしれない。

ストーリーは4つに分かれたドクロストーンを巡るヤッターマンとドロンボー一味の戦い。冒頭、廃墟と化した都市でのヤッターワンとダイドコロンの戦いはあまりうまくはなく、ここで既に疲れるのだが、その次のバージンローダーとの戦いにはちゃんとヤッターワンにメカの素を与えてビックリドッキリメカが登場する。これ、アニメ版の売りの一つだったので、なくてはならないものだったが、普通の実写映画化なら省略してもおかしくない。このほか、アニメ版の声優の小原乃梨子や山寺宏一が出て来たり、歌も同じものを使っていたり、アニメを再現というよりはアニメに敬意を表してとことん忠実に映画化している。同じ竜の子プロアニメの実写化で比較すれば、「キャシャーン」よりはるかにましである。

出演者は総じて良かった。生瀬勝久とケンドーコバヤシはボヤッキーとトンズラーにぴったりのキャスティングだし、ヤッターマン1号、2号の櫻井翔と福田沙紀も悪くない。ギャグに真面目に取り組んでいる点に好感が持てる。特に良かったのはドロンジョを色っぽく演じた深田恭子。この映画の魅力は深キョンの魅力に尽きる。深キョン、もっと映画に出るべきだと思う。だから、ヤッターマンと偶然キスしてしまったドロンジョが恋心を燃え上がらせるエピソードをもっと本筋に絡めて欲しくなる。出演者は良いのにキャラクターの描き込みは足りず、薄っぺらなのである。

劇場には子どもたちがたくさん見に来ていたが、中には理解できないギャグもあったのではないか。父親を助けられた考古学者の娘の翔子(岡本杏理)がヤッターマン2号に対して「2号さん」と呼びかけ、「さんは付けなくていいの」と言われるシーンとか。三池崇史はヤッターマンをリアルタイムで見ていた世代だろうが、やっぱり大人向けのテイストも随所にあるのだった。

僕もヤッターマンはリアルタイムで見ていた。「ガッチャマン」の印象が強かった竜の子プロにしては異質なアニメだなと思った。タイトルからしてそうだし、中身も弾けていた。ヒーローもののパロディを開き直りで作った感じがしたものだ。だからヤッターマンはブレイクしたのだろう。といっても僕が一番好きな竜の子のアニメは正統的なヒーローものであり、それを超える深みと内容を兼ね備えていた「宇宙の騎士テッカマン」。ああいうシリアスなアニメの実写映画化もできないものだろうか。

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