ウルトラマンコスモス VS ウルトラマンジャスティス The Final Battle
「ウルトラマンコスモス」の3度目の映画化。3度も映画になったウルトラマンは初めてで、円谷プロはこれ以外に映像化するキャラクターがないのかと思えてしまう。そんなにこだわるほどの内容ではないだろう、コスモスは。それでもある程度、VFXは整っているし、ストーリーも分かりやすいから、子供たちはまずまず満足するだろう。ただ、このレベルで甘んじていては、かつて特撮をリードした円谷プロとしては情けないのではないか。
2000年後に地球は有害な存在となるとの理由で、宇宙の調和を守る宇宙正義が地球上のすべての生命の抹殺を図る。ウルトラマンジャスティスはその決定に基づき、コスモスと対決。コスモスはジャスティスとロボット怪獣グローカーの連合軍に敗れ、消滅してしまう。地球滅亡まであと35時間。かつてのチームEYESの面々は消えたコスモスとムサシを探し求める。一方、ジャスティスは地球人の女の子に触れ、徐々にその心を変化させていくが…。
有害な存在になるのにまだ2000年の猶予があると言うムサシ(杉浦太陽)に対して、ジャスティスの地球での姿ジュリ(吹石一恵)は「サンドロスにも2000年の猶予を与えて失敗した」と切り返す。サンドロスは昨年の「ウルトラマンコスモス2 THE BLUE PLANET」に出てきた怪獣で、このシリーズ、ちゃんと映画第1作、テレビ、映画第2作、そして今作と一応つながっている。
宇宙正義という存在が今ひとつよく分からないのは置いておくにしても、ジャスティスの心を変化させるのに愛や希望や夢という言葉を持ち出して説明するあたりがダメなのである。地球と人類を守るコスモスと宇宙を守るジャスティスの対比が映画のメインテーマになるはずなのに、そのテーマは深化されず、極めて表面的な描写で終わってしまう。宇宙にとって有害な人類をなぜ守るのか。このテーマを突き詰めれば、映画はもっと深みが出てきたはずだ。なのに脚本はテーマの設定だけで、その後の展開の工夫を放棄している。子ども向けと思って、この程度のことしかやらないようでは大した映画ができないのは自明のことだ。
人類の守護者と宇宙の守護者という対比は、「ウルトラマンガイア」の人類の守護者(ガイア)と地球の守護者(アグル)の対比によく似ている(監督・特技監督の北浦嗣巳はガイアシリーズも担当した)。そういえば、ガイアでもこのテーマは突き詰めきれずに終わったのだった。去年も思ったのだが、「ウルトラセブン」のような名作を生むにはやはりしっかりと話を作っていく必要がある。
【データ】2003年 1時間17分 配給:松竹
監督・特技監督:北浦嗣巳 監修:円谷一夫 チーフプロデューサー:鈴木清 音楽:矢野立美 脚本:長谷川圭一 川上英幸 撮影:大岡新一 美術:大沢哲三 衣装デザイナー:小暮恵子 衣装:新井正人
出演:杉浦太陽 吹石一恵 市瀬秀和 清水圭 麻田ユリカ 仁科克彦 東城大 嶋大輔 坂上香織 須藤公一 鈴木繭菓 斉藤麻衣 松尾政寿 西村美保 市川兵衛 嶋田久作 大後寿々花