後半、サンタクララ市の市街戦を見ていて、なんとなくキューブリック「フルメタル・ジャケット」を思い出した。市街戦の場面に関しては感情を廃した平板な作りが逆に効果的だ。というか、ここでの戦いは目標がはっきりしているから面白いのだろう。スティーブン・ソダーバーグ監督がエルネスト・チェ・ゲバラの半生を描く2部作の第一弾。映画が描くのは1956年から59年にかけてのキューバ革命に伴う戦いと1964年の国連でのゲバラの演説およびインタビュー。これを交互に描く構成は決してうまいとは言えず、前半の森の中の戦いはやや退屈だった。ベニチオ・デル・トロはいつものようにゲバラにリアリティを与える好演をしているのだけれど、どうもドラマの作りが弱い。ソダーバーグは徹底的にゲバラをリサーチして、映画で描かれることにフィクションは入っていないそうだが、それをドラマ化するところでうまくいかなかったようだ。
ソダーバーグはパンフレットのインタビューでウォルター・サレス「モーターサイクル・ダイアリーズ」(2004年)について、この2部作の第一章のようなものだ、と語っている。映画1本として見るならば、青春映画として見事に完結していた「モーターサイクル・ダイアリーズ」の方が上だ。
映画が始まる前にゲバラがその「モーターサイクル・ダイアリーズ」時代に南米の各国を見て影響を受け、その後にもう一度南米を旅行してフィデル・カストロに出会い、キューバ革命に参加したことが説明される。アルゼンチン出身のゲバラは南米の圧政に苦しむ人々を見て、革命を目指すのだ。ゲバラが未だに支持されるのはキューバ革命だけにこだわった人ではなかったからだろう。映画の前半、ゲバラは医者としての能力を生かして負傷兵や村人を助け、兵士に読み書きを教える。そうしたエピソードはあってもゲバラという人間を十分に描いたとは言い難い。この映画で分かるのはキューバ革命はどのように進んだかということだけである。実在の人物を描いたからといって、ドキュメンタリーのように撮る必要はない。感情を揺さぶるものが欲しくなるのである。
もちろん、当初は1本の映画として作られた作品を2本に分けたのだから、第2部の「39歳 別れの手紙」を見なければ、判断を下すのは早すぎる。第一部がシネマスコープサイズで撮られたのは戦闘シーンのスペクタクルも意識したからだろう。これに対して第2部はビスタサイズを採用しているという。ボリビアでどのようにゲバラが戦い、処刑されたか、それをソダーバーグはどのように描いているのだろうか。ゲバラの人間性がより深く描かれることを期待してやまないが、この作りではあまり期待できない気もする。
ソダーバーグは合わないんですよ。
だけど予告の女性の声が素敵だったので観よう♪と決意していたら、最近はそれがおすぎに変わっていてショックでした。
「トラフィック」は良かったんですけどね。
他の作品はあまり盛り上がらないのが多いですね。