20世紀少年
ほぼ失敗作。前半、少年時代と1997年を交互に描く部分がまるでダメである。ありえない話にどうリアリティを持たせるかが大事なのに、ここにはプロットはあっても描写はない。筋を追うのに精いっぱい。だからドラマが一向に盛り上がらない。あれほど多数の登場人物の誰一人にも輝きがない。見せ場がない。エモーションがない。ドラマの組み立てが弱いのは描写がないからにほかならない。
カルトな新興宗教集団「ともだち」の台頭と世界で起きる怪事件、それと主人公ケンヂの少年時代の「よげんの書」との関係をじっくり描くべきだった。特に重要なのは「ともだち」の怖さだったろう。脚本には原作者の浦沢直樹が加わっているが、これも間違いのように思える。やはり本職の脚本家が原作をばっさり省略して再構成してしまえば良かったのだ。最初から原作にひれ伏していてはそれを超える映画ができるはずがない。
堤幸彦には無理な題材だったのだとつくづく思う。こうした映画、山崎貴の方がふさわしいのではないか。
ラスト、3000人の中からオーディションで選ばれたというカンナ役・平愛梨(「棒たおし!」)のはつらつとした走りのみが第2章へのわずかな希望をつないだ。しかし、基本的には監督変えるべきだろう。今さら無理だろうけど。