2000年日本映画ベストテン総評

なんと3位までが時代劇。9位の「さくや 妖怪伝」を含めると、4本も時代劇が入ったことになる。こんなことは「シネマ1987」ベストテン史上初。しかし、入るのが納得できるほど、どれもレベルが高かった。
 1位の「御法度」は大島渚監督が司馬遼太郎「新撰組血風録」(「前髪の惣三郎」「三条磧乱刃」)を映画化した作品。新撰組に入隊した1人の美少年をめぐる隊員たちの衆道(男色)の確執を描く。美少年を演じたのは故松田優作の長男・松田龍平。このほかビートたけし、武田真治、浅野忠信、的場浩司、トミーズ雅、崔洋一、坂上二郎ら出演者がいずれも好演。加えてワダエミの従来の新撰組観を払拭する衣装、坂本龍一の流麗な音楽、西岡善信の完璧な美術が相俟って、映画の印象は極めて豊かなものになった。大島渚が力を見せつけた傑作。
 2位の「どら平太」は黒沢明、市川崑、小林正樹、木下恵介の名匠四人の脚本をただ1人存命の市川崑が映画化した。原作は山本周五郎「町奉行日記」。主人公のどら平太を演じたのは今絶好調の役所広司で、豪快な奉行を演じ、爽快さを漂わせる映画になった。
 3位の「雨あがる」は黒沢明の遺稿を長く黒沢明に師事した小泉堯史監督が映画化した。寺尾聡、宮崎美子の夫婦が雨宿りした宿場での出来事を温かく描く。剣の腕は一流だが、優しすぎて仕官できないでいる浪人の人柄は寺尾聡のキャラクター実によく合っていた。見終わって優しい気持ちになれる佳作。
 4位は宮部みゆきの小説を映画化した「クロスファイア」。パイロキネシス(念力発火)能力を持った主人公(矢田亜希子)が自分の能力に疑問を持ちながらも、悪と戦う姿を描く。平成「ガメラシリーズ」の金子修介監督がまるでガメラのように演出。ロマンティックな描写も冴えたエンタテインメントとなっていた。
 5位「ナビイの恋」と7位「どこまでもいこう」は宮崎映画祭上映作品。「ナビイの恋」は沖縄を舞台に79歳のナビィおばぁの60年の歳月を越えた大恋愛物語を中江裕司監督が演出。笑って泣いてハッピーな仕上がりが支持を集め、海外でも高い評価を得た。「どこまでもいこう」は塩田明彦監督。10歳の少年2人の日常を友情、裏切り、別れを通して描いた。
 同点5位の「ホワイトアウト」は真保裕一のベストセラーを新鋭・若松節朗が仕上げた大作。原作自体が和製「ダイ・ハード」と言われたが、完成した映画は日本映画としては珍しいスケール感があり、楽しませた。主演の織田裕二も好演。
 8位は山田洋次監督「学校シリーズ」の最新作「十五才 学校IV」。家出した少年が旅先で出会った人々との交流を通じて成長していく姿を真摯な演出で見つめた。日向ロケした作品。
 9位「さくや 妖怪伝」と10位「ジュブナイル」はどちらも少年少女向けで、監督がいずれも特殊効果担当出身。「さくや…」は公儀妖怪討伐士・榊咲夜(さかき・さくや)役の安藤希がアクションも見事にこなした快作。大作ではなく、SFXには予算をかけていないが、原口智生監督は話をよくまとめていた。「ジュブナイル」のSFXはアメリカ映画と比べても遜色ない出来。未来から来たロボットと少年たちの交流、地球の水を奪おうとする宇宙人との対決を描いた。山崎貴監督の演出に弱い部分は見受けられたが、世界に通用するSFXでSF映画を製作しようとする姿勢には好感が持てた。(hiro)

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2000年外国映画ベストテン総評

 アメリカ映画は相変わらず強いが、中国映画からイラン映画、韓国映画まで入り、バラエティに富んだベストテンとなった。
 1位に輝いた「サイダーハウス・ルール」はベストセラー作家ジョン・アーヴィングの原作。メイン州にある孤児院とそこで育った少年の自立を描く。 ラッセ・ハルストレムの演出に狂いはなく、院長役のマイケル・ケイン、ロマンスの相手シャーリーズ・セロンをはじめ脇役に至るまで好演していた。
 2位の「マルコヴィッチの穴」は奇妙なアイデア。俳優マルコヴィッチになれる穴を発見したことから巻き起こる騒動を描く。スパイク・ジョーンズ監督はこのおかしな世界をユーモラスにまとめた。
 3位の2本はアン・リー、デヴィッド・リンチというベテラン監督が本来の得意分野とは異なるテイストに挑戦した作品。「グリーン・デスティニー」は19世紀の中国を舞台にアクションと悲恋を絡めた一級の娯楽作品。「マトリックス」のアクションで一躍世界的に有名になったユエン・ウーピンがまたまた驚くべきアクション演出を披露した。チョウ・ユンファ、ミシェル・ヨーの大人の秘めた愛がしみじみと良いが、何よりも主演のチャン・ツィイーの魅力が弾けている。清楚で勝ち気なヒロインを演じたツィイーを見るだけでも価値がある。
 「ストレイト・ストーリー」は病に倒れた兄に会うために、73歳の老人アルヴィン・ストレイト(リチャード・ファーンズワース)が時速8キロのトラクターで560キロの旅をする。アメリカ南部のい風景を十分に描き、ハートウォーミングな仕上がり。しかしリンチのブラックさは隠し味的に健在だった。
 5位の「スリーピー・ホロウ」は18世紀のアメリカが舞台。不気味な村スリーピー・ホロウで起きた連続殺人をニューヨークの警官(ジョニー・デップ)が合理的な推理で解決する。亡霊と魔女の存在を認めた上でのミステリー。美術、セット、撮影が高水準。ティム・バートンの演出も手堅かった。6位「あの子を探して」はチャン・イーモウ演出の中国映画で、1999年のベネチア映画祭グランプリ。中国の学校が舞台。ドキュメンタリー的な手法を駆使し、一人もプロの俳優を使うことなく、嘘のない本物の感情を引き出してみせた。
 7位は韓国で大ヒットした「シュリ」とアカデミー作品賞「アメリカン・ビューティー」が同点で並んだ。「シュリ」はアクションの切れ味の鋭さもさることながら、南北分断の悲劇を改めて観客に痛烈に訴えた。熱い熱い傑作。「アメリカン・ビューティー」は崩壊寸前の家族をユーモラスにそして辛辣に描いた。
 9位の「運動靴と赤い金魚」はイラン映画。児童映画の枠を超え、兄妹の心の触れ合い、家族の絆をマジッド・マジディ監督が心温まるタッチでうたいあげた。
 10位の「マグノリア」「M:I-2」にはどちらもトム・クルーズが出演。「マグノリア」はロサンゼルス郊外のサン・フェルナンド・バレーを舞台にさまざまな人々の1日を描く群像ドラマ。ポール・トーマス・アンダーソンが非凡な才能を見せた。クライマックスには唖然とさせられる。「M:I-2」は「ミッション・インポッシブル」の続編。クルーズがカンフーアクションに冴えを見せ、ジョン・ウー監督が手際よく仕上げたエンタテインメント。「マトリックス」に続いてハリウッドへの香港映画の影響を如実に感じさせる1作だった。(hiro)

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