2004年12月号

出席者:  ♂  小野、加賀、笹原、横山 ♀ 杉尾、手塚、野口、林田(書記)

2046

監督:ウオン・カーウァイ
出演:トニー・レオン、木村拓哉、コン・リー、マギー・チャン

小 野:お久しぶりです。予告編を見たときは、近未来のSFかと思っていたのですが、全然違って、見てる 間、ずっと「花様年華」は良かったなあ..とそのことばかり考えていました。「2046」を語る資格はありません(笑)

笹 原近未来のような設定があまり意味をなしていない。もっと現代の話で進めて欲しかった。トニー・レオンとチャン・ツィイーのところが一番よかったのですが、全体的にごちゃごちゃし過ぎていたような感じがしました。嫌いな作品ではないのですが、ガーワイ監督では「恋する惑星」の方が良かった。

手 塚 「花様年華」をビデオで前日に見て行ったのですが、あまりピンと来なくって、「2046」も近未来のこととかこだわらずニュートラルな気持ちで見たのが良かったのかも知れません。いろんな女のひとのエピソードが、成就しなかったからこそ変わらない想いを持ち続けているような気がして、先ずそこが胸に沁みました。チャン・ツィイーとトニー・レオンの関係ですが、好きで好きでたまらない男に愛していると言ってもらえない、それでも愛する女の気持ちがすごく切なくて、あのエピソードだけでも、あの映画はもういいと思いました。後のエピソードもそれなりに成就出来なかったからこそ、ずっと永遠に変わらないと、ガーワイ監督の言いたがったところかな、と思いました。

林 田 とにかくこの映画を見ながら「花様年華」のことをずっと思っていました。どうしても「2046」の感想が、「花様年華」の感想になってしまうんですよね。「花様年華」はすごく素晴らしい映画だと、あらためて思いました。トニー・レオンはチャン・ツィイーにあれだけ想われてもどうしても心はマギー・チャンなんだからそれが嬉しかった(笑う)もう1回続きを作って欲しい。マギー・チャンとトニー・レオン、再会して欲しいなあ。

手 塚 チャン・ツィイーの気持ちを思うと辛くて...イーモウ監督はチャン・ツィイーに惚れ込んで、どの作品もとにかく美しく撮っていたから。彼女はイーモウ監督を堕落させた女ですね(笑)

アイ,ロボット

監督 アレックス・プロヤス
出演 ウイル・スミス ブリジット・モイナハン

加 賀 面白かったですよ。鉄腕アトムのような世界ですね。ロボットが家電製品みたいに普及していって。最初、博士が自殺して、ロボットが殺したんじゃないかと言うことのミステリーから入って企業の陰謀がからんで、ラストでちゃんと落ちがある。終わってしまえば、こんな話はいくつも見たような気がしますが、ほぼ満足な出来かなと思いました。

小 野 これはアイザック・アシモフのSF「われはロボット」からの発想を得て作られた映画ですね。ロボット三原則はアトムでも引用されていました。 昔見た漫画のイメージとは違ってCG全盛の素晴らしく面白い作品になって...僕は大体ウイル・スミスが大好きで、ウイル・スミスが出て来るとどんなA級大作でもB級っぽくなると言う(笑)素晴らしい彼の人徳だと思う。

笹 原 結局犯人は誰か、主人公が何故ロボット嫌いか、とかその辺りの持って生き方は面白いなと思いました。テンポもあるし今までのロボットものとすれば一線を画しているな、と言う気はしたんですが、私はラストが今いち乗り切れない感じはしました。でも、ああゆう終わりかたしか出来なかったかな。でも、面白かった。

林 田 もう最後のシーンがどんなだったか私忘れてしまった。とにかく面白くって、超カッコいい車に目を奪われて、駐車場が素敵だとか、緑のまったく無いビルばかりの映像の素晴らしさが凄く印象的で、それにロボットサニーの表情が可愛いだとかそんなことばかりに心を奪われて肝心のストーリーの方はあまりどうでもよくなってしまいました。すみません。

手 塚 ロボット三原則なんですけど、とにかく人間に服従しなさい、人間の安全を守りなさい、と言うことだと思ったんですね。じゃあ、その服従させる相手を人間が思うままにどんどん扱っていっていいのか? あのサニーが「私は何者なんですか?」って聞いた時に涙がぽろっと出たんですね。「イノセンス」を見た時に私はこのことを聞きたかったんだと分かりました。ロボットたちの反乱のとき、旧型ロボットが「人間を守れ、守れ」と新型ロボットに立ち向かって行くシーンで、「そんなに人間を守らんでいいとよ」と言いたくなりました。

小 野:ほんとに痛ましい感じがしました。

杉 尾 この頭の弱い私でもよく分かるストーリーで、楽しみました。博士が自殺したのかサニーが殺したのかそこは少し分からなかった。ロボットの話なんだけど、人間味ある話でした。

野 口 この手のロボットものを見る時に私が想いだすのは、アシモフでもアトムでもなく「火の鳥」のロビタなんですね。あれに比べるとサニーは全然人間らしい顔をしていて特別につくられていて、感情を理解できる高等な頭脳を持っているからこそ最後でリーダーになり得たんだと思います。何が良かったかと言うと、サニーが一生懸命「自分は何者なんだろう? 何故作られたんだろう?」と自問自答しながら話が進んで行くとこがきちんと描かれていて、ウイル・スミスのアクションシーン以上に見応えがあったと思います。だからラストシーンも怖いと言うよりも希望が持てて私は好きです。

杉 尾 ほんとロビタみたいやったね。言われてみると。

この後、横山さんも加わり、この日アメリカ大統領選挙で、ブッシュが再選されたことから、「華氏911」の話に熱がはいりました。

ウォルター少年と、夏の休日

小 野 ほんとにこれは素晴らしい映画で、ほんとに、ほんとに素晴らしい。マイケル・ケインとロバート・デュバルがもうほんとに素晴らしい(笑)とにかく文句無しに素晴らしい。原題は「セカンドハンド・ライオンズ」で、老いぼれてもライオンはライオンって感じで。阪神ファンの僕としては、虎の方が....では、またみなさん

 (ここで電車の時間がきて小野さん退場)

横 山 「華氏911」を見た後、怒りまくった状態で見たので、印象が薄くなりました。まあまあの佳作とは思いましたが、それだけですね。生ぬるいというか…。見ていて原作があるのかと思うぐらい話がよく作ってあるんですけど、しょうがない母親を持つ少年が伯父さんの影響を受けてたくましくなっていくというのはスティーブン・キング原作の「アトランティスの心」に似てます。マイケル・ケインとロバート・デュバルの演技はさすがにうまいと思いました。オスメント君はずいぶん大きくなりましたが、顔つきはどこか少年の面影を引きずってますね。大人と子供の中間という感じ。この役は11歳か12歳の子役がやった方が良かったのではないかと思います。

手 塚 ちょうど私が観に行った日の前日、イラクで日本の青年が命を落としたので、作品の中の老人二人の青春時代が私には余計にお伽噺の様に思えました。未知の土地に行って色んなものを見てみたい、経験したい、純粋にそう願い、冒険し、恋をした彼らの生き方は、今の私達の世界ではまさに映画の中でしか存在しないのだな、と感じ、寂しく映画館を後にしました。私もいつか死ぬときが来たら、彼らの様に、明るく楽しく死にたいですね。それと、あんな親戚(というか親)欲しいですねぇ。腕っぷしは強いし、有り余る程のお金…オスメント君、ラッキーです。

杉 尾 楽しくて、切なく、あったかい映画だった。二人のおじさんが、とにかくカッコイイ。動物たちも可愛くて…。ガースおじさんの話すハブおじさんの武勇伝が嘘のようで、でも、最後は、真実だったと、きっちり型をつけているのが素敵です。真夜中に、ジャスミンの事をハブ伯父さんにたずねて、「ずっとそばにいて欲しい」と訴えるオスメントくんの演技は、相変わら絶品で、泣かされました。ラストのエンドロールのアニメーションの画面もお洒落だった。宝物のようにしまっておいて、ときどき取り出して繰り返し見てみたい夢の在る作品でした。

笹 原この映画タイトルが良くない。あぶなく見逃してしまうところだった。酒井さんと鹿児島の小野さんが褒めていたから観に行った。おじいさん二人と少年の出会いを劇中劇を交えて楽しく描いていて、素直に感動できる映画だった。なんといっても、ロバート・デュバルとマイケル・ケインの演技が素晴らしい。どちらが今年の助演男優に選ばれてもおかしくないし、多分、今年彼らを超える役者は出ないでしょう。たまには、こういう60年代くらいののんびりした映画が観たい。少し変わった「家族」の暖かさを感じる映画だった。また、〔男のロマン〕を描いた映画でした。

加 賀 「ウォルター少年と、夏の休日」という題名と違い、マイケル・ケインとロバート・デュバルの二人の爺さんがすべて!といった感じの映画でした。それに対しウォルターくんの描き方がいまいとつで、それが映画全体を薄っぺらに してる。ちょっと残念。劇中劇もちょっと、うさんくさいけど。それもこれも二人の存在感でカバーしてあまりあるとこがイイ。けっこういい作品だった。

今月の一本

笹 原 「笑の大学」笑って感動して泣きました。

横 山 「華氏911」怒りまくりました。

手 塚 「キャット・ウーマン」だめだめ映画だったんです。(?)

杉 尾 「笑の大学」笑って、泣いて・・・・、ツボが合えば最高に気持の良い作品だと思う。

野 口 「花様年華」芯がしぼれてて、見やすい映画でした。

林 田 「花様年華」またビデオで見て再度惚れ直しました。

加 賀 「父と暮せば」

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