2005年3月号

参加者:林田・野口・杉尾・笹原・横山・手塚・矢野  書記:加賀

モーターサイクル・ダイアリーズ

監督:ウォルター・サレス 脚本:ホセ・リベラ
出演:ガエル・ガルシア・ベルナル ロドリゴ・デ・ラ・セルナ ミア・マエストロ

横 山 終盤にハンセン病の施設で誕生日のお祝いがあって、主人公が「便宜上の国籍で分かれていますが、我々、南米諸国は一つの混血民族なのです」とお礼のスピーチをしますよね、あれがいかにも後に革命の指導者になるゲバラらしい言葉だと思いました。この後に川を泳いでハンセン病の人たちのところに行く場面が感動的でした。主人公がゲバラでなくても成立する青春映画、ロード・ムービーだと思います。だから、ラストにその後のゲバラの生涯を説明する字幕が出てくるのは余計に感じました。あれはなくても良かったですね。

笹 原 エルネストとアルベルトのコンビによる南米大陸縦断旅行が面白く描かれ、エルネストがいろんな南米の民族と出会いにより変化してゆく様子に感心した。もちろん、この人が後のゲバラであるというのもこの映画の重要な要素だった。本人の手記だけに彼だけがかっこよく描いてあるが、それはしかたないと思う。いろんなエピソードない共感できるものがあり、自分も南米を一緒に旅したような錯覚に陥らせるあたりは演出のうまさか。ウォルター・サレス監督の前作「セントラル・ステーション」も良かった。今後楽しみな監督だ。僕らの年代ならほとんどゲバラのことは知っていると思うが、この旅行記については全く知らなかった。それだけに新鮮な驚きとここでゲバラが目覚めたのか、と納得するであろう。

手 塚 まず、チェ・ゲバラについては顔がTシャツにプリントされてる、というイメージしかなく、革命や共産主義についてもあまりピンとこず、中国の文化大革命を題材にした映画とかから考えるに、恐い・激しい・密告、といったネガティブな雰囲気でした。ロード・ムービーだという事だけ知って観たのですが、多分「いつこの青年が恐い感じになるんだろう?いつ激しい感情を持つんだろう?」と気持ちのどこかで期待?していたと思います。なので少し拍子抜け、というかフツーに青春映画だったじゃん!と、観終わってから気付いたのが残念でした。もう一度、ニュートラルな気持ちで観たい作品でした。

林 田 去年見ていたら私はきっとベスト10の中にきっと入れていたでしょうね。ほんとに大好きな映画でした。

ゲバラの本は前に読んでいたのですが、革命家、闘争家、といったイメージが強く、彼が医学を志していた事もこんなに温かい家族に育った事も何も知らず、この映画で始めて知ってびっくりしました。私はロードムービーが大好きなんです。だから、ゲバラと彼の友人がモーターバイクで旅にでるシーンから、もう感動感激でした。純粋な医学生のゲバラが美しく素敵でした。またあらためて彼の自伝を読んでみたいと思いました。

野 口 宮崎映画祭で「アカルイミライ」を観た時に、上映後のトークショーでラストシーンの少年達にゲバラTシャツを着せたコーディネーターの人が、「チェ・ゲバラ」は20世紀で一番良い男だ」と言っていた。と言う話を聞いて以来きになっていました。確かにかっこよかったです。役者さんが美形と言う事を差し引いてもかっこよかったです。バイクが好きなので、二人の道中は観ていてとても楽しかったです(ノートン500は英国製でした(恥・乗るのが好きなだけで薀蓄は無いのです)49〜50年代前半にロードレース界で大活躍したそうです。ボデローサ号は39年型なのでずっと古いです)。いきなりマシントラブルを起こしたり、喧嘩を始めたりするところも含めて、あー・あるある、みたいな。ロードムービー&青春映画の普遍的な部分も良かったです。ただ、様々な出会いのあとマチュピチュにたどりついたゲバラが「変えるには銃が要る」とか言うのですが、そういう事はやはりあの時代のあの状況でこの人じゃ無いと言わないことなんじゃないかと思いました。

矢 野 ゲバラを詳しく知らなかったので、彼に大変興味を持つきっかけとなる映画でした。彼の患者をそして虐げられている人々を見つめる瞳が何て優しく美しい目をしているのだろうと思いました。それはきっと私が勝手にそう見ているのかも。果てしなく続く道と降り続く雪、虐げられた人々、囲われた人々、滅びた文明をみながら様々な人間の矛盾と向き合い始める旅が彼の人生を大きく変えたのですね。二人の雰囲気がとてもよかった。 

加 賀 二人がバイクで旅をしてる間はちょっと退屈だったけど、バイクを無くしてヒッチハイクをしはじめてから、主人公も言ってたけど本当の人とのふれあいが始まった。そして社会の底辺で苦しむ人達を知り、革命に目覚めていく主人公の姿が、かっこよくも、最後を知ってるだけに、危うく恐いきがした。しかし、ロードムービーとしては、いい出来で楽しめた。

カンフーハッスル

監督:チャウ・シンチー 脚本:チャウ・シンチー他 撮影:プーン・ハンッサン
主演:チャウ・シンチー ユン・チウ ユン・ワン ドン・ジーホワ

笹 原 課題作にならなかったら観なかったと思います。前作「少林サッカー」は最初から最後まで笑えなかった。サッカーという競技をここまで崩していいのか、と思った。しかし、今回は充分面白かった。ただ、この貧乏くささについていけなかった。あの普通の人が実はカンフーの達人というギャップはたしかに面白いのだが…。あと、主人公に一貫性がなく感情移入できなかった。ま、今回は笑えただけ良かったかも。

野 口 前作よりずっとストーリーや演出がみやすくて、とても面白かったです。どこをとっても面白いんですが、主人公は大体いつも喧嘩かドジで痛い目にあっているので、痛がって良いのか笑って良いのかわからない不思議な感じがしながらも大爆笑してきました。

主人公は徹底的にダメな人で、それが突然、才能だけでしゃんとするというのには納得がいかないものがあるけれど、駄目っぷりも面白かったので良いです。昔の香港映画みたいだと思いました。あと、恐怖と笑いを誘う敵キャラの設定が良かったです。

横 山 うちの子供たちは「少林サッカー」が大好きなので、この映画も家族で1月3日に見に行きました。最初は残酷なシーンがあったりして、子供が見て大丈夫かなと思ったんですが、その後はとても面白くて安心しました。ナイフを投げたら、壁にあたって跳ね返って自分に刺さるシーンとか、ブラックな笑いでおかしかった。相棒がナイフを投げようとしたら、チャウ・シンチーに刺さっちゃうのは北野武の「座頭市」の影響があるんじゃないですかね。チャウ・シンチーはあいい加減な男の役もカンフー・マスターの役もどちらも似合いますね。

加 賀 カンフー映画は、ほとんど見ないんで、あまりの「アリエネー」画面に、ただビックリしました。これくらい飛んでしまうと、内容はどうでもよくなってしまう。導入部はシリアスで、ちょっとめんくらってしまったけど、その後はブラックなユーモアや、派手すぎるアクションにあきれながらも楽しく観ることができた。こういう映画も、たまにはいいね。

今月の1本

林 田 「おばあちゃんの家」

手 塚 「花と蛇」のメーキング

野 口 「男と女」

矢 野 「ニュースの天才」

横 山 「オペラ座の怪人」 面白くなかった。

杉 尾 「オペラ座の怪人」

笹 原 「僕の彼女を紹介します」宮崎未公開の正月映画です。観終わってなぜか晴れやかな悲しい物語です。

加 賀 「ボーン・スプレマシー」

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