2005年12月号

出席者:鬼束 金川 横山 杉尾(久) 林田 手塚 杉尾(隆) (書記)矢野

シン・シティ

【データ】2005年 アメリカ 2時間4分 配給:ギャガ
監督:ロバート・ロドリゲス フランク・ミラー 特別監督:クエンティン・タランティーノ 製作総指揮:ボブ・ワインスタイン ハーヴェイ・ワインスタイン 製作:ロバート・ロドリゲス フランク・ミラー エリザベス・アベラン 原作:フランク・ミラー 脚本:フランク・ミラー ロバート・ロドリゲス 撮影:ロバート・ロドリゲス 音楽:ロバート・ロドリゲス ジョン・デブニー グレアム・レヴェル 美術:ジョネット・スコット

金 川 非常に面白かった。期待していたわけでなく ミッキー・ロークが出ているということで見ました。コミックをうまく映画化している、特にコミックだとスッと流れていくような主人公の心理などがより伝わるような感じで、見終わったあとスッキリしました。イライジャ・ウッド君の特異的な性格の気味悪さがうまく出ていた。強くなければ男じゃない、優しくなければ男じゃない、というハードボイルドのような感じの映画でした。

鬼 束 顔が傷だらけの人とすぐ殺されてしまう顔の綺麗な人の声がよく似ていて紛らわしかった。よく解らない映画でした。

横 山 結構期待して行って非常に面白かったです。描写が残酷ですが、モノクロがあってその中にパートカラーがあったりしてセンスのいい絵作りをしていました。話が3つあってそれぞれの話が面白く、2番目のミッキー・ロークのエピソードが良かった。金 川 さんがおっしゃったようにハードボイルドの話ですよ。ミッキー・ロークの役は「さらば愛しき人よ」に出てくる男の人がいるんですが、それを参考にしていると思います。女優は皆色っぽくて良かった。非常に女性にも見てほしい映画だと思います。2部作3部作もできるようですので見逃した方は是非DVDで見てください。

<ここで場所を移動しました…>

 このあとクライブ・オーエンとミッキー・ロークがどの役かとか、ブリタニー・マーフィーは大嫌い(人柄は1番いいらしい…)とか、ジェシカ・アルバは誰と絡むのかなど…

金 川 始まりが実に粋な感じですね。

杉尾(久) 見たら面白そう…

金 川 イライジャ・ウッドがかわいそう…何であんな役に使われるのか…(誰?)「ロード・オブ・ザ・リング」の人(あぁー)残酷なところでは普通だったら赤い血がぱぁーっと飛ぶところで、色を変えてあるので(白)そんなに感じない。

杉 尾(久) 色が違うだけで不思議ですね。

林 田 面白そうだけど話の筋が解らない。残酷なのはいや。

矢 野 原作のコミックでもモノクロに一部色が変えてあるのですか?(矢 野 :後で考えたらオールカラーのコミックって無いですよね…失礼しました。)

横 山 そうみたいです。

林 田 音楽も良かったって?

横 山 と思って、サントラ買ったけどそうでもなかった。

ヒトラー 最後の12日間

【データ】 2004年 ドイツ/イタリア  155分
監督 オリヴァー・ヒルシュビーゲル原作 ヨアヒム・フェスト、トラウドゥル・ユンゲ
脚本 ベルント・アイヒンガー
音楽 ステファン・ツァハリアス
出演 ブルーノ・ガンツ 、アレクサンドラ・マリア・ラーラ 、ユリアーネ・ケーラー 、トーマス・クレッチマン 、コリンナ・ハルフォーフ

横 山 アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた作品です。

杉尾(久) 政治とかに疎いので何を言っていいかわかんないんだけど、不覚にも危うくヒトラーに同情しそうになった。今まで思っていたヒトラーの狂気的なユダヤ人虐殺とか非常な命令を下している場面はなく戦争に負けると解っていてジタバタしながらも死を覚悟していくという人間味のあるところが出ていたかな。その周りにいる人たちがヒトラーが指揮する能力が無いのにその命令に背けず翻弄される所は見ていて面白かった。何を思ったかというと、上の方で戦いがあっていて、軍医に連合軍が来るから逃げなさいといってもあえて危険なところへ入っていき、現場でひたすら治療を続けていた軍医と一緒になって手当を始めるところが印象的でした。いよいよヒトラーが自殺し手伝いに来た医者が引き上げる時、握手を求めると相手の軍医の広げた両手は血まみれでできないけどありがとう、そういって目にいっぱい涙をためているその無念さの表情を見たときに胸が痛くなりました。いろいろ大義名分があっても戦争はやっぱり人殺しに変わりなく、ヒトラーがどうのこうのというより戦争はいけないというのだけ受け止めてきました。子どもが何が正しいか分からず洗脳されていたけど、最後生き延びたのには希望が持てました。ユンゲはなぜもうちょっと早くしゃべれば良かったのに、言い訳しいてたけれど説得力はありません。

林 田 映画の中のヒトラーは運を背にして扇動していく勇ましい姿が無くなっていて…あの映画は、杉尾さんも言ったように、もしかしたらヒトラーには多少同情すべき所があるのかなと人に思わせようとして作ったとしたら大間違いだと思う。悪いことをしている人って(ヤクザの世界にしても)近い人に対してはものすごくやさしい。猫なで声出して。凶暴的な人には共通して妙なやさしさで人を惑わせる所があるのかな。あの人が今頃言い出してなぜあんな映画作ったか?あの女の人も卑怯よね、自分はいい思いをして、爆弾にも当たらず飢えることもなくヒトラーの機嫌を取ってあそこまで来ておきながら何事もなく波風が過ぎ去るのを待って私は騙されていましたと言っても同情できない。(裁判は受けている)最初に今さらあのときは分からなかったと言っているけど、やっぱり悪い。けれど…逃れられないよね。あの時代、あの立場で立派な正義を絶対に貫ける人間が果たして何人いるかよね。自分の命、家族、国を思う気持ち、迷いながらもあんな風になっていくのかなぁ。そうなる事へも同情だし。今の日本のこといろいろ考えることもあったし、映画と言うよりも考えさせられました。私も政治とか疎いんですけれど、たぶん私は洗脳されて「ヒトラー」って言う方かもしれない(爆笑)

金 川 ナチスの映画と言えば「地獄に堕ちた勇者ども」「将軍たちの夜」「愛の嵐」の3本よく見てたけど、ヒトラーを核としてその周りにいろんな人たちがいてヒトラー自身は要塞の中に閉じこもっていろいろと自分の考えをしていた、閉ざされた世界にいるということの善悪を考えてしまいました。限られた情報でしか考えることができないことは、恐ろしいと感じました。先ほど出ました身近な人にはいい人だけど総統としては怖い人、解らない人というのは誰にでもあるのかなあという感じがしました。その辺の捉え方で許してはいけないのでは。家族に対しては優しいお父さんだったんだよ、といえども実際にやっていることは悲惨なことをしている人と分けて考えなくてはいけない必要があるのでは。秘書は何の罪にも問われなかったけれど、状況的には実際に政策運営に関わったわけではないというのは解るけど、普通の人が聞いたら割り切れない思いがあると思います。ゲッベルスの一家が心中をしたことは典型的な怖さがありヒトラーが浸透してきて理想的ナチスファミリーだと思うけど、それが体制が壊れると共に死を選ばざるを得なかったというところに悲劇を感じました。

鬼 束 見る前から思ってましたが暗い映画でした。子ども達だけが救いだったのに母親に殺されてしまった。

横 山 タイトルがヒトラーの12日間なのでヒトラー中心なのかと思っていましたけどドイツの敗戦間際の12日間で、勿論ヒトラーもあるんですが「日本の一番長い日」のような感じがしました。ヒトラーを同情的に描いた部分というのはほとんど無いと思いました。今までの映画に出てくるヒトラーというのは狂気の人物としてだけ描かれていて、普段の顔が描かれていなかった。監督は「エス」という映画を撮った人です。普通の人であってもヒトラーみたいになる可能性はあるわけだから、狂気の人物でないから大丈夫だと思っていたら日本も小泉が危ないかなという気が…。秘書の話が出ましたが、あの時点では協力はしたけど手を下した訳じゃないし、言わないよりは言った方がいいだろうし、たぶん僕も言わなかったと思います。(笑)

林 田 「ベルリン陥落」という映画があります。子どもの頃見ました。ヒトラーが死ぬところで、ソ連が侵攻してきて赤旗立てるところ、死因が毒殺か自殺か逃げたか解らない時代でその映画で初めてヒトラーの死をみました。今回の映画で証言されているから毒を飲んで死んだんですね。考えると人間というのは元々悪なのかな、本当は善で何かをきっかけに悪になるのか…人をやっつけて生き延びる本能を持っていて悪いのが当たり前で、いろんな不思議な事件がある中で人間だからあんな悲惨なことができるのかとか、正義を貫いて死ねるのかとかいろいろと考えました。

(このあと9・11以降の話、イラク、アフガン、パレスチナ、ユダヤ博物館いろいろと盛り上がりました。 そこへ杉尾氏登場…!)

杉尾(隆) ヒトラー最後の映画で印象的なのが「ヨーロッパの開放」ソ連版 あれはソ連の意図的なものが色濃く出ていてヒトラーを貶めた内容。今度は今まででなかった生存者の情報を入れてきちっと納得する最後の内容。良くできていた。でも何か一つ足りなくてそれはユダヤ人に対する者が全くなかったこと。秘書の人の情報で描かれているので秘書はユダヤ人のことは全く聞かなかったし、ドイツの閣僚ですら知らなかった。裁かれる立場の人だからヒトラーは犯罪者としては出てこなかった。SS親衛隊との会話はあったはずなのに映画の中には出てこなかったのが不満。歴史にも沿っているし良くできているかな。エバ・ブラウンと結婚するでしょ日本は役所に届けて結婚成立ですが、教会であげることが成立で届けるか届けないかは別の問題だそうです。

林 田 勝手なイメージですがエバの描き方が優しくて、ヒトラーと一緒に悪いことをした人じゃないにしてもけばけばした変なタイプのイメージだった。

杉尾(隆) 色んなふくらむイメージを元に描いているからわからない。ヒトラーになぜ皆は惹かれていったのか。(演説に惑わされた…)ヒトラーはクーデターでもない正規の制度の中で権力を取ってきた。ドイツの前のワイマール共和国は理想ばかりの国で経済的に破綻していた、うまくいかなくて国民の不満があった。領土を拡張することによって理想的な状況を一時期作った。でもそれを継続するためには外に拡げて行かなきゃいけないジレンマがあった。ヒトラーはどんどん侵略していく、そうしないと理想的にみえるドイツ国民の生活を守れなかった。国民は解らなかったんでしょうね、ユダヤ人をあれほどまでに殺さなければ悪くは言われなかったでしょうが。

矢 野 側近の者でも極端に差別があり、忠誠を誓うもの、明らかに心離れる者、複雑な思いで見ました。地下の要塞へと続く長い通路のようなトンネルを何度も行き来する団長のような人、最前線の現場の痛みが届かない中最前を尽くしていく様子や、非常な指揮の元でドイツ軍の手駒となって死んでいく兵士達の姿が悲しかったです。ドイツ人同士で殺し合っている所など、ヒトラーは結局ドイツ国民を守らなかったのですね。まだまだ知らないことがいっぱいでした。

 このあとあの話題作「四月の雪」非常に盛り上がりましたよ。男性の皆様の評価の高いこと!いやぁ実にこの映画を課題作にしても十分良かったのでは?と思われるほど盛んな意見がきけました。時間がないので割愛!!

今月の1本

杉尾(久) DVD「トスカーナの休日」

杉尾(隆) 「空中庭園」 キョンキョン

横 山 「散るぞ悲しき」ノンフィクション

金 川 DVD「シンデレラ」

林 田 「花まんま」

手 塚 「陽炎」

矢 野 「キングダム・オブ・ヘブン」