2006年2月号

 出席者  杉尾、林田、野口、手塚、金川、横山、笹原、酒井、 書記(林田)

SAYURI

監督 ロブ・マーシャル
出演 チャン・ツィイー、コン・リー、ミッシェル・ヨー 渡辺謙

手 塚 あれを全世界の人が見ると思うとぞっとして恥ずかしい。初め寒村で日本語をしゃべっていたのに、都に連れて来られたらいきなり英語で話し始めると言うのも変。コン・リーのあの姿も許せない。すごく嫌だなあと思って、どうしても、、鳥居に駆け込んで、いきなり寺の鐘をゴーンと鳴らすなんて、凄く笑いました。その後からもう怒濤のように嫌な所が目について、とにかく嫌でした。

酒 井 日本の伝統の生け花にサボテンをさしているような、そんな感じでしたね(笑い)日本的情緒と言うか、わびさびの世界を表そうとしながら、魂が無くて型だけのものになっている。ハリウッド的でいいのかもしれないけど、、これくらいの理解しかしてくれないのかなと、ちょっと寂しくなりましたね。努力は認めますけれども。日本語と英語のチャンポンと言うのは、いくらなんでも違和感がありすぎます。ストーリーも悪くはなかったんですけれども、あの崖から飛び降りて死んでしまった方が日本的で良かったんじゃないかと思いましたけど、そこはハリウッドですよね。ちゃんとハッピーエンドに持ってくる所がね(笑い)

横 山 最初のほうですね、映像に厚みがあって、子ども時代はまだ良かったのですが、チャン・ツィイーになってから、非常に詰まらなくなってしまって、彼女のファンであるにもかかわらず詰まらないと思いました。で、で、僕は心が広いので(笑い)多少のことはどうでもいいのですが、もっと話を面白くして欲しいなと思いました。

金 川 面白かったです。芸者をよく知らない外国人が書いた本をもとに、日本に来たことも無い外国人の監督が作った映画だなーと思いました。日本の野球をコミカルに描いた小説があるのですが、そう言う感じかなと思いました。コン・リーの着物の着方は、中国風で少し惜しいかなと思いました。手塚さんも言ってたようにゴーンと鐘を打つ所は笑ってしまいました。

林 田 みんなを敵に回して今日私はすごく不利。すごく面白くてベストテンの5位に入れてるんですよ。私はまず外国の人が見た日本だと思っていたので、多分こんな風に日本は見えているのかなと、それと、着付けその他のいい悪いは別にして凄く迫力があったと思うし、前半のストーリーからずーっと惹き付けられて、鐘がゴーンっと鳴ったっけ?そんなことは全然気にもならなかった。外国人が日本の浮世絵のイメージで実像化したようで、確かに日本人が見たら変だけど、私はいっさい腹は立たなかった。迫力があってハリウッド映画の面白さを感じました。ただ画面の暗さがちょっと気になったけど。私自身、芸者のこともよく知らないし、私の目も外国風になってるのかもしれない。

手 塚 私芸者のことはよく知らないけど、世界の何も知らない人に、あれを日本の芸者と思われちゃ困ると思ったんですよ。あんなだらしないものが日本の文化と思われたらと思うと凄く恥ずかしかった。

笹 原 (遅れて登場)すみません。英語と日本語が混ざるのはどうもね。全て英語にして欲しかった。女優は良かった。映画はそうでもないけど、意外性でもった映画でしたね。

全員 子役は可愛かったね。あの子は良かった!!

男たちの大和 YAMATO

監督 佐藤純也
出演 反町隆史、中村獅童、山田純大

杉尾(久) 思い通りに泣かせて頂きました(笑い)でも、映画自体は特に面白いとは思わなかったです。最初の方退屈して、戦争の映画はあまり苦手なので見てても面白くなくて、どこで泣くんだろうと思いながら見てました。母子の別れのシーンで、あ、これかーと思って、後戦争が終わって田んぼの中で死んだ友人の母親に会う所、この二つのシーンではドドーッッと涙があふれて、子どもを想う母親の気持ちと言うのが私にはズンズンと入って泣きました。監督が泣かそうと思ってたにしても、私はOK.思うつぼにはまってもOK.

金 川 私は大和のプラモデルを作った世代ですので、あの大和を作ったと言うだけで凄いなと思いました。脚本を書く人によって映画は違うんだと思いました。あれを佐藤純弥ではなく笠原和夫あたりが書いてたらかなり変わったものになってたかなー?って感じました。原作は読んでないのですが、生き残った人の話を一部聞いてそれで映画化するとこうなるのかなと思いました。どっち付かずの映画であまり感動は受けませんでした。

野 口 何て言ってけなしたらいいか言葉に困る映画だと思ったんですけど、凄く大事なことを伝える為の映画なんだろうと思って見に行ったんですが、台詞がどうしても今いち良くなくて切った貼ったみたい、面白くないと思ってしまったので、泣かせるシーンでもどうしても入れなかったです。一番面白いなと思ったのは飛行機がいっぱい飛んで来て大和をばーっとやっつけるシーンが不謹慎ですが一番面白かったです。後、音楽が邪魔でした。もったいないですね。あんなかっこいい戦艦まで造ったのに、、

横 山 全然駄目だとは思わないのですが、全部B級だと言う気がしました。脚本も何もかも。戦艦が作り物っぽかったし、俳優の演技も、、脚本が一番下手ですね。だから盛り上がらないというか。佐藤純弥ははっきり反戦の立場なんです。音楽は僕はそんなに邪魔に感じなかったけど。腹が立つのはなんでこの程度の映画でキングコングより上なのか(観客動員数)若い人には受けないはずの映画です。

酒 井 泣きましたよ(爆笑)やはり、継ぎはぎだらけなんですよね。泣かせるシーンも無理矢理くっつけたって感じでした。どっかで見たような話があって、陳腐な思いがしました。この種の映画は同じパターンで作られて来て全部同じ。一番したの階級の人が主人公になって、上のほうの話はあまり出てこないところは気に入ったんですが、戦後60年経って、やっぱりこの程度かなとがっかり。何時も日本人は被害者なんですね。もっと被害を受けた中国人や韓国人はこう言う映画を見たら怒ると思うんです。全然反省が無い。まだ国際的にぎくしゃくしているのは当然のことと思いますよ。突き詰めれば天皇の責任をうやむやした戦後の処理が出来ていないんですよ。その点アメリカはベトナム戦争が正しかったのかと問う「プラトーン」のような映画を作ったのはえらい。日本は戦後ずーっと「二十四の瞳」からこの大和まで一貫し被害者なんだと言う意識なんですね。もう少し冷静に考えないと、また同じ失敗を繰り返すのでは?とい う気がしました。

笹 原 映画の出来うんぬんよりも、これは事実なんですね。その重みはすごく感じましたね。演出がどうの脚本がどうおってこと以前の問題で、事実の重みを非常に感じました。そう言う意味ではなんかこう、ぐっと映画にはいれたと言う気がしました。映画の評価は別として。

林 田 酒 井さんがおっしゃったように日本の戦争映画と言うのは「何と日本はひどい目に会ったことか、、」と思わせられて、この映画で泣かされたシーンも、どこかで見た話のような気がして、じわっとは泪が出なくもなかったけど、それほどではありませんでした。

このあと、戦争の話から、最近の日本のニュースに至るまで、大和を離れて話は多いに盛り上がり、人はどこまで正義を貫いて清く正しく生きられるか、なんてことにまで発展。これが映画の合評か? あたかも政治討論みたくなってしまいました。

キング・コング

監督・脚本 ピーター・ジャクソン
出演 ナオミ・ワッツ、ジャック・ブラック、エイドリアン・ブロディ

手 塚 小学校の低学年の時にジェしカ・ラングのキング・コングを見て幼いながらもなんでこんな不条理な話があるものかと涙しました。ピーター・ジャクソン監督の「キング・コング」に対する想いが伝わって来てすごく面白かったです。その後昔の白黒映画のキング・コングを見たら、そのまま今回も最初のディテールがそのまま使われていて新たな感動がありました。ほんとに面白かったです。映画って言うのはこれでいいとおもうんですよ。夢があって冒険があっていい男がいていい女がいて、はたまた怪物が出て来て、あれぞ映画だって思いました。

杉尾(久) また泣いた(笑い)すいません。面白かったです。テンポが速くて、あの迫力、恐竜との追いかけっこの迫力も面白かった。キングコングがビルから落ちていくところなんか、泣いて化粧も何も落ちて(笑い)で、ナオミ・ワッツもすごくきれいで、あんなにきれいな人は寒いときでも薄いドレスで震えもせんのやね。コングのあの表情が凄くリアルで良かったです。ブラック・ジャックの表情が唇をぎゅっと噛み締めている表情がものすごく良くて、ワクワクしました。最高でした。

金 川 3時間あまりの長さを感じられないくらいに面白かったです。モスラはキング・コングのパクリだったんだなと思いました。私は高所恐怖症なので、キング・コングが最後にエンパイア・ステートビルで、跳び上がって飛行機を捕まえるシーンでは背筋がゾクゾクしました。少年が読んでいた本、あれは地獄の黙示録だなと気がつきました。ほんとに力の入ったいい映画で、ベストテンの監督賞に入れました。

野 口 ジェシカ・ラング版を小学生の時見てやっぱり面白かったです。小さい時に見ると、何て可哀想なキング・コングって泣けた映画だったので、今回はそう言う意味でほんとにずーっと面白かったです。特に最初の方の島の場面がアクションに次ぐアクションで退屈しなかったです。一番印象に残っているのはキング・コングがすごく可愛かったですね。ナオミ・ワッツを助けた後の、分かってくれよみたいな表情良かったです。 笹 原 恐竜との追っかけっこは凄いなあと思って、逆にキング・コングの話がずれてしまって、ま、コングはいろんな表情はするのですけど、言葉がしゃべれないのでどうしてもね(一同笑い)ちょっと、、これだけかって気もしました。ナオミ・ワッツは良かった。今までで一番でした。ジャック・ブラックもね、商人根性が良かった。臼井さんに似てましたね(笑い)非常に楽しめる映画でした。

横 山 面白かったです。船のシーンが少し長かったかなと思いましたが、その他のシーンは良かったです。恐竜のシーンは凄かった。3時間もなんでと思ったんですが、あっという間でしたね。内容が初版からすると詳しくて面白かった。ナオミ・ワッツは特に今回美人と言う程じゃなかった。今までの方が良かった。影響力という点で言うとこの映画で何かに影響するということは無いんじゃないか、33年版は非常に影響力があって、あれからいろんな映画が出来てますよね。

酒 井 もし映画がエンターティメントであるならばこれば、おそらく最高の作品ではないかなと思います。ちょっと長いかなって気はします。前半の部分もうちょっと削れるのでは?それでも非常に楽しめました。ロード・オブ・ザ・リングの持ち味が出てますよ。素朴な疑問はあのドクロ島からどうやってコングを運んだか?あの船に乗せたらおそらく沈むだろうと思いますよ(笑い)とにかくニューヨークでも全部お決まりの場面なんですよ。それをどう自分のものに結びつけるか。ストーリーは分かっているのに面白い。以前のものと比較されてもなお驚きがあると言うことが凄いと思いましたね。

林 田 私は船に乗る以前からワクワクさせられて引っ張られましたし、島の中の追っかけられるシーンも、今まで見たどの怪獣映画より一番でした。人間と怪獣入り乱れて迫力あったと思います。ただね、キング・コングに涙は出なかった。何かわざとらしくて、作り物って感じで、同情も無かったし、女性に恋をしたと言っても、自分で泳いで来た訳ではないから、それほどの感動は無かったけど、映画全体はもう凄く面白かった。ジャック・ブラック大好き。あの自分勝手な根性が大好き。

今月の一本

手 塚 永遠の野原(漫画)

杉尾(久) バッテリー(本)

野 口 キング・コング

横 山 ゴジラとアメリカの半世紀(本)

酒 井 クラッシュ

金 川 ラベンダーの咲く庭で

笹 原 二人の五つの分かれ路

林 田 ライフ・イズ・ミラクル