シネマ 2005年2月

「ニュースの天才」
報道の在り方を考えさせる作品
(2005年2月3日)

ジャーナリストの仕事は社会の出来事を正確に公平に伝えることにある。しかしどこまでが真実で、どこからがわい曲された記事なのか一般市民には分からない。

これは実在のジャーナリストの物語である。米国の最も権威ある政治雑誌「ニュー・リパブリック」の記者スティーブン・グラスは戦争や政治などの大きな記事ではなく、身近な出来事をスキャンダラスに面白く報道することで人気を得たが、その多くはねつ造したスクープ記事だった。

ひとたび栄光を手にした彼はそれを失う恐怖から次々とうそで周りを固めて行く。親しい先輩や友人も彼の人懐っこい性格にだまされるが、それを見抜いて厳しく追及していく編集長が男らしくて素晴らしい。

誰の心にも巣くっている人間の弱さ、ずるさ、それを見過ごしてしまう世の中の甘さを見事に描き出して、正義とは、真のジャーナリズムとは何かを考えさせられる作品である。(林田)


「ボーン・スプレマシー」
謎解きとスリル見どころが満載
(2005年2月10日)

二年前に公開された「ボーン・アイデンティティー」は記憶を失った元CIA情報員が暗殺者たちの攻防に巻き込まれながら、自分の正体を探る異色のサスペンス・アクションだった。この映画はその続編である。

CIAはベルリンで公金横領事件を調べていたが、何者かに関係資料を奪われる。残された指紋から失そうしたジェイソン・ボーンが浮かび上がる。一方、インドで恋人マリーと新しい人生を歩んでいたボーンは暗殺者によって命を狙われ、マリーを殺される。ボーンは真相を究明すべく再び欧州に旅立つ。

謎解きとスリル、そして派手なカーアクションと、見どころ満載の作品に仕上がっている。主演は前作に続きマット・デイモンで、よりたくましくなった。自分の名前さえ思い出せないのに、情報員としての技術を駆使できるのは不思議な感じもするが、深く考えるのはやめておこう。(酒井)


「パッチギ!」
激しさと希望に満ちた時代再現
(2005年2月17日)

一九六八(昭和四十三)年の京都を舞台に、日本人と在日朝鮮人の高校生たちの反目と友情を描いた青春群像ドラマである。フォークソングに熱きメッセージを託した若者の叫びが聞こえていた時代。三十七年も昔の元気な日本の姿が懐かしくよみがえる。

イムジン川を挟んで南北に分断された祖国に熱い思いを抱きながら、差別に負けじと生きている在日朝鮮の人々も日本人以上に燃えていた。「パッチギ」とはハングルで頭突きのこと。パッチギの洗礼を受けながら若者は恋をし、時代を見詰め、時代にのみ込まれ、良くも悪くもさめた現代の大人へと成長してしまった。

長い間発売禁止だったフォークソング「イムジン河」が全編に流れる。大人になってしまった男女にはほろ苦い郷愁を、今の若い人々には荒々しい時代への驚きを与えてくれるだろう。監督は井筒和幸。激しいながらも楽しく希望に満ちあふれた時代を再現した大傑作である。(林田)


「僕の彼女を紹介します」
笑いと感動の韓流恋愛映画
(2005年2月24日)

一昨年ヒットした韓国映画「猟奇的な彼女」の監督クァク・ジェヨンと女優チョン・ジヒョンのコンビによる最新作である。

正義感に燃える熱血女性警察官ヨ・ギョンジン巡査(チョン・ジヒョン)がひったくりと間違えて善良な高校教師コ・ミョンウ(チャン・ヒョク)を逮捕する。そんな出会いにもかかわらず、やがて二人は恋に落ちる。しかし、待ち受けていたのは過酷な運命だった。

熱血すぎるヨ巡査のハチャメチャぶりは大いに笑えるが、感動的なラブストーリーである。ラストは「ゴースト ニューヨークの幻」を思い起こさせる。

劇中にはボブ・ディラン「天国への扉」の韓国人歌手ユミによるカバーやXJAPANの「TEARS」など多彩な音楽が流れる。

この作品、全国的には正月映画として公開されたが、宮崎市では未公開だった。都城シネポートでの公開はうれしく思う。(志賀)