映画とネットのDIARY(tDiary版)

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2012年12月10日 [Mon]

SSD換装

2年前に買ったデスクトップパソコンのハードディスクをSSDに変えた。やはりSSDの効果は絶大でソフトウェアの起動がかなり速くなった。

買ったのはSamsung SSD840オールインワンキット500GB。Cドライブの使用量は140GB程度だったので、250GBのSSDでも良かったのだが、とりあえず余裕を持たせた方が良いだろう。

SSDを付属のUSBケーブルで接続し、CD-ROMからSamsung SSD Magicianをインストール。起動してSite Linkのタブをクリックすると、Softwareダウンロードのリンクがある。ところが、このページにあるノートンゴースト用のシリアルナンバーがどこにもない。これではディスクの複製機能が使えない。これでしばらく悩んだ。サポートページを見てみたら、新しいページがリンクされていた。SSD840シリーズからはディスクの複製にノートンゴーストではなく、Samsung Data Migration Softwareを使うらしい。これ、はまる人がけっこういるのではないか。なぜ古いリンクのままにしておくのか、理解不能だ。説明書ぐらい入れておいてはどうか、日本サムスン。

ディスクの複製には2、3時間はかかる(途中で外出したので正確な所要時間は分からない)。あとは交換するだけ。ここでまた問題発生。付属キットの固定用金具の背面にねじ穴がないのだ(側面にはある)。いや、あるのだが、4個あるねじ穴はSSDの固定に使っていて、ほかにない。SSDと金具をパソコン内部のねじ穴に一緒に固定すればいいのだが、面倒なのでやめておいた。Cドライブは一番下にあるし、SSDは振動もしないので、固定しなくても構わないと言えば、かまわないのだった。それにこれはDELLのパソコンの方にも問題がある。先日、USB3.0の拡張ボードを設置した時にも内部が狭くて作業がしにくかった。どうもDELLのパソコン、拡張性には難がある。

CrystalDiskMarkで計測してみると、シーケンシャルリードは今までのHDDの2.5倍程度、4Kのリードに関しては21倍も速くなった。Windowsのエクスペリエンスインデックスでもディスク転送速度のスコアが5.9から7.8に上がった。これほど効果があるならノートパソコンの方も交換したいのだが、分解にかなりの手間がかかるようで尻込みしている。HDDが壊れてどうしようもなくなったら、交換しよう。


2012年12月15日 [Sat]

お宝保険は本当に得か

生命保険の見直しをすることにした。加入しているのはJA共済の終身型で、保険料は年間32万円ほどの一括払いである。去年までは何も考えずに支払ってきたが、今年から投資を始めたので、費用対効果が気になり始めた。で、JA共済の担当者に来てもらい、話を聞いた。

これまでに支払った保険料の総額は18年間で600万円を超えているそうだ。保険金は病気死亡の場合4200万円、災害死亡時6200万円、入院特約1日1万円(ただし10日以上の入院の場合しか出ない)といった内容。子どもが小さかったころはともかく、今は4200万円もいらない。子どもが大学を卒業するまでの費用を上回る蓄えもある。おまけに全労済にも入ってる。計算してみると、今のまま支払いを続けた場合、65歳の満了時までに1000万円を超える保険料を払うことになる。なのに、66歳以降の死亡保障は700万円。これでは見直すしかない、という気にもなるでしょう。

担当者が提示したのは死亡保障を2000万円に落とす内容。保険料は年間14万5000円程度に下がる。これに医療保障を加えると、82000円程度が加算される。合計額は今より10万円ほど安いが、それでもまだ高く感じる。医療保障は本当に必要なのか?

新しい医療保障では入院1日目から日額1万円が出るそうだ。最近の病院は長い入院は認めてくれないのでせいぜい1カ月だろう。30万円ぐらいなら不要だ。先進医療を受けられる契約にもなっていて、例えば、「固形がんに対する重粒子線治療」295万3000円にも対応している。これはかなり迷うが、払えない金額ではない。だいたい県内にはこういう治療をしてくれる病院はない。JA共済の指定病院は筑波大学附属病院など全国5カ所だけだ。医療保障の82000円は66歳以降も支払う必要がある。こうしたことを考えると、医療保障の部分はすっぱり切り捨ててもかまわないのではないかと思う。

予定利率について聞いてみた。加入した平成6年12月の予定利率は検索して調べたら、一般的に3.75%だった。JA共済の場合は4.75%だという。20年以上前の利率5%を超える保険は「お宝保険」と言うらしいが、そこまではなくてもかなり有利な利率であることは間違いない。お宝保険は解約しない方がいいというのが大方の意見だ。今の利率は1.5%しかないからだ。

ところが、よくよく聞いてみると、4.75%で運用しているのは保険料32万円のうち、わずか6万円余りなのだそうだ。最初に一時金として約72万円(それまで入っていた他社の保険の解約返戻金をあてた)を払っているので、これに毎年6万円を加えて18年間4.75%で運用すると、330万円ぐらいになっている計算。今後も6万円を毎年積み立てにあてた場合、65歳で670万円ぐらいになる。66歳からはいかに計算上増えようが、解約返戻金は700万円に届かないという。ちなみに今、解約すると、返戻金は300-400万円程度らしい。

投資信託の場合、3%の手数料でも高いと感じる(だからネット証券のノーロードの投資信託をやっている)が、保険の場合は3%なんてもんじゃない。80%ぐらいの手数料(じゃないんだけど)を取っている計算だ。これならば、即刻解約して自分で運用した方がお得じゃないかと思う。返戻金を400万円として、保険料を払ったつもりで毎年22万円積み立て、利回り2%の投資信託で運用すると、65歳までに800万円近くなる。66歳以降は医療保障分の8万円を積み立てて運用すると、80歳の時には1200万円ほどになる計算なのだ(その頃まで生きてるかどうかは分からない)。

払い済み契約についても聞いてみた。これまでに払った保険料で残りの保障をまかなうやり方。払い済みにすると、今後の保険料支払いはなくなるかわりに、医療特約などは付かず、死亡保障額も1000万円以下になる。JA共済はこれに抵抗する場合が多いと、検索したページには出てきたが、担当者はいやな顔もせず、「保障額を試算してみます」と答えた。担当者によると、最近、払い済みにする人が増えてきたそうだ。保険相談でのアドバイスらしい。

いろいろ検討した結果、今の段階では解約して自分で運用するのがベストのように思えてきた。お宝保険と言うけれど、「とんでもなく手数料が高い投資信託」と思った方が良いのではないか。投資に詳しい人は継続か解約か検討してみた方がいい。もちろん自分で運用する場合、元本割れの危険が常につきまとう。投資について知らない人はやってはいけない。

それと、蓄えの少ない20代、30代の頃は家族のためにも保険に入っていた方が安心だ。投資に詳しい人でも、解約した途端に交通事故死なんていうことが十分考えられるので、家族が生活に困らないぐらいの蓄えがない場合は解約しない方がいいだろう。JA共済のホームページには必要保障額のシミュレーションがある。シミュレーション結果がマイナスにならない限り、保険には入っていた方が良いということになる。


2012年12月23日 [Sun]

リスクとリターン

わたしのインデックスというインデックス投資支援サイトがある。個人投資家がコツコツ長期分散投資するための情報やツールを無料で提供していて、利用者はけっこういるようだ。ここの資産配分(アセットアロケーション)ツールを利用して作成したのが下のグラフ。現金(定期預金)が6割近くを占めるという保守的なポートフォリオで、リターン1.5%、リスク4.1%。これはどちらも平均(リターン5.1%、リスク11.3%)を下回っている。

ただし、過去のリターンは将来のリターンを規定するものではないというのが定説だ。衆院解散以来、株価が上昇していることもあって、実際のリターンは今のところ10%を超えている。これが続いてくれるとうれしいのだが、日本株は為替の影響を大きく受けるので、また円高傾向になったら、リターンは確実に下がる。

同サイトによると、日本株の過去20年のリターンはマイナス25%という恐ろしいことになっている。さらに恐ろしいのはリーマンショックの時期を含む過去5年間のデータでマイナス43%だ。リーマンショックのような株価の暴落は数年に一度の割合で起きる。株価上昇に伴って「持たざるリスク」なんていう言葉を用いる証券関係者がまたぞろ出てきたが、持っている方がリスクが大きいに決まっているのだ。日本株に集中投資するのはかなりのリスクがあると思った方が良い。

だから分散投資が必要なわけで、「しぶとい分散投資術―世界金融危機でわかった!」という本には分散投資をしていた場合、大恐慌後も数年で資産が回復したと書いてある。3年前に出た本だが、外貨投資に関する説明も的確で、名著だと思う。


2012年12月24日 [Mon]

「マージン・コール」

大手投資銀行の破綻の危機を描く映画。リーマンブラザーズをモデルにしたようで、不動産担保証券(MBS)が招く巨額損失を事前に察知したリスク管理セクションと幹部が回避のため徹夜で協議する。その24時間を緊迫感のある展開で見せる。マージン・コールとは信用取引で口座の資産価値が所定の基準を下回った場合に追加の証拠金を要求することだそうだ。

Wikipediaによれば、元々は自主制作映画として企画されたそうだが、ケヴィン・スペイシー、ジェレミー・アイアンズ、デミ・ムーア、ポール・ベタニーらベテランキャストがそろっている。今年のアカデミー脚本賞にノミネートされた。日本では劇場公開されず、DVDスルーだった。IMDbの評価は7.1、ロッテン・トマトは7.2。監督はこれが長編映画第1作のJ・C・チャンダ-。

ただ、どうもこういう題材だと、ノンフィクションの方が向いている気がする。投資銀行内部のゴタゴタを描いただけでは物足りず、全体像を知りたい気分になるのだ。金融危機関係のドキュメンタリーで秀逸なのは「インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実」で、分かりやすくここまで面白く見せる技術に感心する。アメリカのドキュメンタリーは層が厚いなと思う。だからアカデミー賞には長編ドキュメンタリー部門があるのだ。

書籍では「リーマン・ショック・コンフィデンシャル 追いつめられた金融エリートたち」がベストと言われているので、ようやく読み始めたところ。


2012年12月27日 [Thu]

「光のほうへ」

2010年のデンマーク映画。東京では昨年6月に公開されたが、宮崎での公開は今年1月。大きな賞を取っているわけでもなく、それほど話題にもならなかったのでほとんど期待せずに見たら、しみじみと良かった。端的に言って肉親の絆と人の再生を描いた映画だ。

ラスト近くまでやりきれない展開である。冒頭、少年2人が赤ん坊の弟に洗礼のまねごとをしている。母親はアルコール依存症。兄弟は母親の代わりにミルクを作り、赤ん坊に飲ませる。しかし、赤ん坊はある日、突然死していた。十数年後、成人した兄のニック(ヤコブ・セーダーグレン)は恋人のアナと別れ、自暴自棄になって最近まで刑務所に入っていた。狭い臨時宿泊施設(シェルター)で暮らしながら、酒浸りの日々だ。弟(ペーター・ブラウボー)は2年前に妻を交通事故で亡くした。今は幼稚園生の息子マーティンと暮らすが、麻薬中毒になっている。兄弟2人とも希望の見えない最底辺の生活だが、より哀れを誘うのは子どものいる弟の方だ。

麻薬を打ち、寝過ごした弟は冷蔵庫が空っぽなのを見て、昼食を持たずに幼稚園へ行けとマーティンに言う。今日は友達の昼食を分けてもらうんだ。「いやだ」とマーティンは泣き出す。「いつだって、そうじゃないか!」。

この後、兄弟はそれぞれの事情で逮捕される。雪がぱらつくある日、ニックは刑務所の中庭で鉄格子の向こうにいる弟をみつける。

「おい! 兄さんだ」
「ニック」
「なんてザマだ」
「言えた義理か」
「いつここに?」
「3週間前」
「マーティンは?」
「どこか知らない…。兄さんを想ってた」
「俺もだ」
「もっと話したかった。もっとたくさん会えばよかったよ」
「電話しようとしたんだ」
「あの時、俺たちは悪くなかったよ。いい兄さんだった。精一杯やった。俺も頑張ったよ」
「どうしたんだ。大丈夫か?」
「でも、これまでだ」
「何だって? 何て言った?」

この場面からラストに至るまでが秀逸だ。兄弟の絆、親子の絆、過去との決別、そして再生。そうしたもろもろのことが描かれる。自暴自棄だったニックが再生のきっかけをつかんだのは弟との刑務所での再会だっただろう。ニックの右手にはアナのイニシャルの刺青があったが、映画の初めの方でニックは苛立って公衆電話を何度も殴り、右手にけがをする。それを放置していたため悪化し、刑務所の中で医者から右手を切断されてしまう。右手をなくしたのは悲劇だが、それは同時に自分を呪縛していた過去との決別にもなったに違いない。そしてマーティンの存在がある。マーティンの名前の由来が明かされるラストは重たくて、ある意味、幸福な余韻を残す。傑作だと思う。

原作はヨナス・T・ベングトソン。監督はトマス・ヴィンターベア。原作はスウェーデンの文学賞を受賞しているそうだ。映画のIMDbの評価は7.4。僕は人が再生する姿を描く映画が好きなので、8.0ぐらいの評価をしたい。


2012年12月29日 [Sat]

何が心を動かすのか

日本テレビが「風と共に去りぬ」を初めて放映した時だから、30年以上前のことだ。ラジオを聴いていたら、こんな内容のハガキが読まれた。

私は事業に失敗して多額の借金を背負いました。このままでは一家心中するしかない追い詰められた状態でした。そんな時にテレビで「風と共に去りぬ」が放映されました。主人公のスカーレット・オハラが「神さま、私は負けません。この苦難を生き抜き、二度と飢えません!」と天を仰いで力強く誓う場面を見て、考えが変わりました。自分もスカーレットと同じように、もう一度頑張ってみよう。そう思い直しました。

言うまでもなく、「風と共に去りぬ」は名作中の名作だ(このセリフが最後にある前半はすごい名作、「そうだ、タラに帰ろう」と言う後半は普通の名作だと思う)。しかし、自殺を考えているすべての人に自殺を思いとどまらせるような力が、あるいは人生を変えるような力がこの映画にあるかと言えば、そんなことはないだろう。

映画や小説から何を受け止めるかは観客や読者の考え方や経験、置かれた状況によってさまざまに異なる。作者が作品に込めたメッセージを作者の予想以上に大きく受け止めることがあるし、別のメッセージを受け取ることもある。作者が何気なく描いた作品の細部に大きく反応することもある。

ロバート・B・パーカーの小説「愛と名誉のために」(絶版らしい)はそんな部分を描いていた。大学生だった主人公は恋に破れて、少しずつ人生を踏み外し、数年後にはホームレスにまで堕ちてしまう。主人公はある朝、海岸の砂浜で眠り込んでいた時にスコット・フィッツジェラルド「グレート・ギャツビー」の一節をふと思い出す。

人の振る舞いの基盤は、堅い岩の場合もあれば、沼沢の場合もある。

この言葉がきっかけとなって、主人公はゆっくりと再生への道をたどり始めるのだ。「愛と名誉のために」に感動した僕は「グレート・ギャツビー」も読んでみた。この言葉は確かにあった。それは作品の本筋とはまったく関係ない部分だった。

「愛と名誉のために」の主人公は(ということは作者のパーカーは)この言葉に感じるものがあったのだろう。普通の人なら読んでそのまま忘れるかもしれない一節が強く心に残ったのだと思う。そしてそれはフィッツジェラルドが特に力をこめた部分ではなかったはずだ。

つまり、言葉や描写の意味を大きくしたり、小さくしたり、まったく無意味にするのは、あくまでも観客や読者の方だということだ。同じ場面に感動したとしても、AさんとBさんがまったく同じ人間ではない以上、AさんとBさんの感動の度合いや内容は異なる。

もう一つ、以前にも書いたことがあるが、作家の都筑道夫がキネマ旬報の連載で紹介したアメリカのテレビドラマ「ザ・ネーム・オブ・ザ・ゲーム」の一エピソードを再度書いておきたい。これは本当にうまい脚本だと思う。

 あるラジオ局の人気DJのもとに一本の電話がかかってくる。電話をかけてきた女は失恋によって絶望し、これから自殺するという。驚いたDJは必死で自殺をやめるようにラジオから呼びかける。ありとあらゆる言葉を駆使し、「死ぬのは無意味だ」と自殺を思いとどまるよう説得する。この放送は聴取者にも大きな反響を呼び、「自殺するな」という声が多数寄せられる。
 ところが、女が自殺するというのは嘘だった。深夜になって、再び電話を掛けてきた女は自分が女優の卵であり、演技力を試してみたかったのだと打ち明ける。「あなたのお陰で自信がついたわ」。女は笑って電話を切った。
 DJは自分が騙されていたことにがっかりして放送局を出るが、局の前で暗がりから出てきた一人の女性が「ありがとう」と言って包みを差し出す。包みの中には睡眠薬があった。

この女性は「死ぬな!」というDJの言葉が胸に響いたのだ。DJの真摯な呼びかけは無駄にはならず、1人の女性を救うことになった。

人は物語の言葉や描写自体によって心を動かされるのではない。言葉や描写をきっかけにして、自分で自分の心を動かしているのだ。人間の脳は入力されたデータを分析・解釈し、自分なりのデータに変換している。それが人の心を動かす源になっている。

以上のようなことをつらつら考えたのは、KINENOTEで「光のほうへ」のレビューを読んだら、まったく感動していない人がいたからだ。しょうがない。脳の変換エンジンがそれぞれ違うんだから。


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