映画とネットのDIARY(tDiary版)
検索エンジンからのアクセスで、お探しのキーワードが見あたらない場合はNamazuで再検索してみてください。
【映画の感想一覧】 2004年7月以降 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年
2012年09月16日 [Sun]
■ 「プロフェッショナル 仕事の流儀 高倉健スペシャル」
「どうも初めまして、堤と申します」。
映画「あなたへ」の撮影現場を訪れた堤真一が緊張した面持ちで高倉健にあいさつする。尊敬する大スターとの対面。目を輝かせながら二言、三言、言葉を交わして堤真一は去って行く。その後で佐藤浩市が言う。「あの人は真田広之くんの付き人から始めたんですよ。付き人をちょっとやってて、それからたたき上げてきたので、けっこう頑張り屋さん」。それを聞いた高倉健は堤真一の部屋まで行き、がっちりと握手して言う。「何かでチャンスがあったら、お仕事したい」。高倉健の来訪に驚きながら堤真一は「ぜひ、こちらこそ。ありがとうございます」と感激して答える。
NHKが2回にわたって放送した「プロフェッショナル 仕事の流儀 高倉健スペシャル」はとても見応えがあった。長期間、密着取材しないと引き出せないような高倉健の素顔と人となりを見せてくれた。現場では基本的に座らない。スタッフと同じ食事でなければ手を付けない。雪の降る日もストーブにあたらない。ちょっと偉くなったら、いばりちらす人間が多い中、大スターであっても驕らず高ぶらない高倉健の姿はすがすがしく、プロに徹している人だなと思う。だから高倉健は尊敬され、撮影現場には多くの俳優たちが差し入れを持って訪れる。
さまざまな俳優たちの高倉健への思いが紹介されたが、ビートたけしの言葉が鋭かった。
「変な言い方だけど、たたずまいっていうかね、ロケ現場でもホテルでも、ぽっと高倉健さんが立っているときに、独特の孤独感があるんだよね。華やかさではないんだよね。スターではあるんだけど、健さんのたたずまいというのは非常に日本人にとっては心地よいっていうか。でも俺はすごい孤独を感じるなあとは思う。おいらがしゃべると、冗談は言ってるけども、ここ一番、健さんの考え方を、どう考えているのかというようなことを念頭に置いて、嫌われないように話してしまうというのがあるじゃん。高倉健さんに嫌われないように会話をしているということは本人はじゃんじゃん孤独になるぞ、これって。健さんそれは違うよ、とは誰も言わない時代にきているんで、健さんはじゃんじゃん孤独に見えるようになってきたなと思うね」。
番組では描かれなかったが、高倉健は江利チエミと結婚し、離婚した。それ以来、伴侶には恵まれていない。高倉健が映画の現場とスタッフ、共演者を大切にするのは私生活の孤独も影響しているだろう。撮影が終わると、しばらく姿を消すのはスタッフとの別れが毎回、つらいからだ。6年前の「単騎、千里を走る」の撮影終了時、スタッフと抱き合いながら涙を流す高倉健の姿はをそれを現している。
高倉健は81歳。これから5、6年もブランクがあると次回作は厳しくなる。あと1本でも2本でも早く映画に出てほしいと思う。