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2007年03月18日 [Sun]

[MOVIE] 「不都合な真実」

「不都合な真実」パンフレット「省エネルギーの電化製品や電球に交換しましょう」「リサイクル製品を積極的に利用しましょう」。アカデミー主題歌賞(歌曲賞)を受賞したメリッサ・エスリッジの「I Need to Wake Up」が流れるエンドクレジットにそうしたメッセージが表示される。「これは政治ではなく、道徳問題なんです。強い意志を持って今こそ行動しましょう」。アカデミー長編ドキュメンタリー賞の受賞スピーチでアル・ゴアは映画の中の主張を再び繰り返すコメントをした。そうだその通りにしなくては、という気分になってくる映画である。世界各地で1000回以上行ってきたという講演を中心に組み立てたこの作品、決して映画としての技術は優れてはいないが、昨今の異常気象を見ていると、メッセージにあふれたこの映画の存在は大きい。ゴアの真摯な姿勢も尊敬すべきものであり、価値のある作品だと思う。

地球温暖化の影響でグリーンランドなど陸地の氷河が溶けて海に流入すると、海流が止まり、暖流がなくなることで極地付近の気温が低下する。ローランド・エメリッヒ「デイ・アフター・トゥモロー」(2004年)で(極端に)描かれたことをゴアは講演の中で分かりやすく説明する。極地の氷が溶けると、海水面は6メートル上がり、世界各地で多大な被害も引き起こす。巨大な台風やハリケーン、大雨によって毎年のように被害が起きているから、ゴアのこの説明には説得力がある。そのすべての原因は人間が経済活動によって出している温室効果ガス。それは急激に増えている。これを減らすのは「モラルの問題だ」というのがゴアの主張である。

地球温暖化には懐疑的な意見も含めてさまざまな説が存在するようだ。30年以上にわたって地球温暖化防止に関する活動をしてきたゴアの主張は危機感の強いものだが、ウィキペディアによれば、海水面の上昇は6メートルではなく、「西暦2100年までに30cmから1m」という計算もあるらしい。この映画に描かれたことがすべて真実かどうか、データの解釈が正確かどうかは僕にはよく分からない。「ジュラシック・パーク」の作家マイクル・クライトンでさえ、「恐怖の存在」で地球温暖化説を否定している(これには批判が多い)。

だが、人間が行う活動によって温暖化に限らず、地球環境が害されていることは否定できないだろう。「不都合な真実」がすべて真実であるとかたくなに信じてしまうことは宗教と同じになってしまって良くないと思うが、ゴアが言っている一人ひとりがモラルの意識を持って生活しようという主張は歓迎すべきことだ。ただ、個人的にはモラル以上に政治の問題も多く含まれていると思う。ゴアが選挙で敗れたブッシュ大統領が富裕層の方しか見ていないことは「華氏911」(2004年)でマイケル・ムーアが痛烈に描いていたが、この映画に足りないものがあるとすれば、ああいう権力に対する批判の鋭さだろう。モラルの問題だけでなく、政治の問題も大きいことをもっと指摘しても良かったのではないかと思う。モラルの問題だけにしてしまうと、温室効果ガスを大量に出している企業への圧力は高まらないのではないか。


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