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【映画の感想一覧】 2004年7月以降 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年
2011年05月14日 [Sat]
■ 「ラブファイト」
「八日目の蝉」の成島出監督作品のうち、見ていないのはデビュー作「油断大敵」と、この映画だった。BSジャパンの不完全放送とはいえ、面白く見た。2008年の作品だが、公開された劇場は全国で30館足らずだったらしい。当然、宮崎でも公開されていない。
原作はまきの・えり の「聖母少女」。いじめられっ子だった稔(林遣都)は幼いころから男勝りでけんかが強い亜紀(北乃きい)に守られてきた。高校生になった稔はふとしたことで知り合った大木(大沢たかお)のボクシングジムに通うことになる。亜紀も稔のジム通いを知り、ボクシングを始める。
ボクシングが出てきてもスポ根映画ではない。男と女の立場が逆転していた男女がお互いに惹かれ合っていることに気づく物語。「愛のむきだし」の満島ひかりのようにパンチラも気にせず、得意の回し蹴りを披露する北乃きいがはつらつとしていて良い。ボクシングのフォームにも無理がなく、トレーニングの縄跳びもうまい。北乃きい、運動神経が意外にあるなと思った。林遣都は「バッテリー」「ダイブ!!」「風が強く吹いている」とスポーツ選手の役が多いが、この映画でも違和感がなかった。体を鍛えているのだろう。
ネットの感想を読むと、大木とかつての恋人だった女優の順子(桜井幸子)が絡む部分の評判があまり良くないようだ。僕はここも良いと思った。将来有望だった時にスキャンダルに巻き込まれ、夢を断たれた男女の今を描き、主演の2人と対比した成島出の演出には無理がない。青春映画の佳作。DVDで完全版を見直したい。
■ 「大魔神」
放送画質のきれいさが意外だった。これはブルーレイが出ているのだろうと思ったら、やっぱり3部作を収録したブルーレイボックスが発売されていた。しかし、買うならこのボックスよりも平成ガメラのブルーレイボックスの方だろう。
監督が座頭市シリーズの安田公義なので、時代劇の作劇はきわめて真っ当。謀反を起こした家老が領主を殺し、領民たちを圧政で苦しめる。10年後、生き残った領主の子である兄妹が家老を倒そうとする。家臣たちが山にある武神像を壊そうとしたことで怒った大魔神が姿を現す。
大魔神の設定と特撮にあまり魅力を感じない。怪獣映画の主役はあくまで怪獣であり、怪獣のキャラクターが重要だと思う。大魔神には神としてのキャラクターしかないのが今ひとつ、面白みに欠ける理由なのだろう。家老を倒しても怒りが収まらない大魔神が罪のない領民も殺してしまうという趣向は良いのだから、これをもっと推し進めた方が良かった。付け加えておくと、この映画、作りがしっかりしているので冷笑とは無縁の作品になっている。
Wikipediaの大魔神の項目はとても詳しい。熱心な特撮映画ファンは多いのだ。
■ 「左ききの狙撃者 東京湾」
1962年の野村芳太郎監督作品。DVDは出ていないようなので、書いておくと、これすごい傑作です←オーバー(^^ゞ
WOWOWのストーリー要約を引用すると、「麻薬密売組織に潜入捜査を行っていた麻薬取締官が何者かに射殺され、死体の状況から犯人は左利きであることが判明。捜査一課のベテラン刑事・澄川は、まだ若手の刑事で妹の恋人でもある秋根とコンビを組んで、捜査に当たることになる。組織の一員と思しき武山をマークして尾行するさなか、澄川は、旧友の井上と10年ぶりに再会。井上は、かつて戦場で彼の命を危うく救ってくれた命の恩人で、左利きの優秀な狙撃兵でもあった」ということになる。井上が狙撃者であるわけだが、この映画が面白いのは井上の境遇が明らかになる後半だ。
戦争から故郷の尾道に帰った井上は女に3人失敗し、東京に出てくる。妻と2人で東京湾に続く川のほとりでボート屋を営んでいる。今の妻は少し知的障害があり、井上がいないと買い物もできない。しかし、純粋に一途に井上を愛している。尾道に行くと言って家を出た井上を待ち続ける笑顔が切ない。
脚本は松山善三と多賀祥介。上映時間は1時間24分。シャープで切れ味の鋭いドラマ。今のだらだらと2時間以上もある映画よりずっと知的な展開だ。刑事澄川役に西村晃、井上役に玉川伊佐男。
検索したら、芝山幹郎の紹介記事が実に的確だった。http://eiga.com/extra/shibayamatv/21/