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【映画の感想一覧】 2004年7月以降 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年
2011年05月16日 [Mon]
■ 「大殺陣」
工藤栄一監督が「十三人の刺客」に続いて撮った集団抗争時代劇。1964年の作品。大老の酒井忠清(大友柳太朗)が甲府宰相・綱重を将軍の後継として擁立し、天下を我が物にしようと企む。軍学者・山鹿素行(安部徹)はそれを阻もうと一党を組織し、綱重の暗殺を計画する。暗殺計画に参加するのは神保平四郎(里見浩太朗)ら侍6人。無謀と言える計画で、壮絶な斬り合いの後、侍たちは想像通りの最後を迎える。その後に一工夫しているのがこの映画のミソで、「柳生一族の陰謀」あたりもこれを参考にしたのではないかと思う。手持ちカメラを使った抗争シーンの映像は「仁義なき戦い」を思わせる。
剣の達人など登場しないのが「十三人の刺客」とは違うところ。クライマックスの戦いは誰が戦っているのか分からないほどの集団の中で描かれる。侍たち一人一人の死に特に焦点を当てることもない。それが実録路線のヤクザ映画を思わせるのだ。戦いの後に残るのは空しさだけ。1960年代の映画には戦後の余韻と学園紛争の影響が感じられる。
■ 「十一人の侍」
これは1967年の作品。西村晃が「十三人の刺客」に続いて剣の達人を演じる。クライマックス、豪雨の中での死闘は「大殺陣」の殺陣より見応えがある。ここで夏八木勲と大友柳太郎の1対1の決闘を描くのは集団だけを描いた「大殺陣」の反省に立ったからか。ストーリーもシンプルな仇討ちで分かりやすいのだが、「忠臣蔵」と「十三人の刺客」を合わせたような作りになっていることが減点対象。そういう意味で革新的な部分はないのだけれど、これはプログラムピクチャーとして間違ったあり方ではないだろう。暴君の松平斉厚を演じる菅貫太郎を含めて役者たちも好演している。なお、「大殺陣」と「十一人の侍」はビデオはあるが、DVDは出ていない。
■ 「トゥルー・グリット」
チャールズ・ポーティスの原作を半分ぐらいまで読んだところで見た。冒頭のナレーションは原作の書き出しと同じ。それにかぶせてマッティ・ロスの父親の死体と逃亡する馬を見せるのがうまい省略の仕方だ。冬の西部の風景が美しく、コーエン兄弟は的確な画面設計と描写でストーリーを語っていく。画面に格調の高さがあり、正統派の西部劇といった感じに仕上がっている。今年のアカデミー賞では無冠に終わったが、せめて撮影賞は人工的な「インセプション」ではなく、この映画の方が良かったと思う。
飲んだくれの連邦保安官ルースター・コグバーンを演じるジェフ・ブリッジスはセリフ回しなど、ちょっと作りすぎかなと思えるが、まず好演と言って良いだろう。ちなみに原作でアイパッチをしているのは左目だが、映画では右目になっている。主演のヘイリー・スタインフェルドはこれが映画デビューとは思えない。芯の強い少女をしっかりと演じている。トゥルー・グリット(本当の勇気)はこの少女を指しているのだろう。
ところで、主人公の父親が買った馬は原作ではポニーとなっているし、映画のセリフでもポニーと言っているが、字幕はマスタング。画面に出てきたのも普通の馬に見えた。僕はマスタングについては野生馬という訳しか知らなかったが、調べたら小型の野生馬のことだった。小型の馬だからポニーと言っていたのか?
■ 「パリより愛をこめて」
ノンストップのアクション。ただし、この話、1時間を過ぎたあたりの展開を序盤に持って来た方が良かった。初めの方の展開はノンストップではあっても謎が物足りないのだ。情緒を描く暇もない。昨年、サイモン・カーニック「ノンストップ!」という小説が面白かったけれど、あれを見習って欲しい。ただ、アクションに関しては十分、水準は行っている。トラボルタは敵を殺しすぎだけど。監督は「96時間」のピエール・モレル。主演はジョナサン・リース=マイヤーズ。